2020 Fiscal Year Research-status Report
消化管粘膜上皮化学物質受容機構を介した肥満等代謝性疾患予防に関する研究
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20K11544
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
桑原 厚和 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 客員教授 (60142890)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 郁夫 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (70509843)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 化学物質受容 / 腸管神経系 / 脳腸ペプチド / インクレチン / ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
消化管管腔内には腸内細菌や食物由来の多くの化学物質が存在する。消化管にはそのような化学物質を感知するための化学物質受容機構が存在する。最近、この化学受容機構の破綻が、肥満や糖尿病などの代謝性疾患、心臓病、あるいは高次脳機能に影響することが明らかになりつつある。この化学物質受容機構は、まず、腸のセンサー細胞にある化学物質受容体や輸送体により感知され、その情報が内分泌系、免疫系及び神経系を介して脳へ情報が送られることで初めて機能する。本研究では、消化管粘膜上皮での化学物質受容機構を明らかにし、肥満等代謝性疾患や高次脳機能障害の予防法を確立するための基礎的な知見を提供することを目的とし以下の実験計画を策定した。 本年度は、腸内細菌や食物由来の代謝産物などの受容機構をポリモダールセンサーとして機能している腸内分泌細胞に焦点を当て、化学物質刺激による放出される脳腸ペプチドの分泌動態について検討を加えた。 上記研究目的を遂行するため、粘膜上皮と粘膜下神経叢のみからなるin vitro実験系を用いて、短鎖脂肪酸や胆汁酸などの腸内細菌由来の代謝産物を管腔側からの刺激として、刺激により脳腸ペプチドであるGLP-1/GLP-2およびPYYが血管側へ放出されること、放出されたこれら脳腸ペプチドが、腸管神経系に発現してるそれぞれの受容体を介して、別々の神経回路網を活性化させ、管腔側からの化学物質情報を中枢へ伝えていることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、消化難での化学物質受容機構の最初のステップとなる管腔側刺激により放出される脳腸ペプチドが、どのような機構により中枢へ伝達されるのかをUssing chamber法を用いて解析した。その結果、管腔側からの胆汁酸の刺激による胆汁酸受容体TGR5の活性化によりPYYが放出され、腸管神経系を活性化させることを明らかにした。また、別の化学物質である短鎖脂肪酸は、腸内分泌細胞に発現してる短鎖脂肪酸受容体、FFA2/3を活性化させてGLP-2を放出し、腸管神経に存在するGLP-2Rを刺激することで、情報を中枢へ伝えていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度得られた結果の空間的基盤をなす受容体の位置や神経系での発現などを今後は明らかにすると共に、in vivo潅流系及びc-fos発現を指標とした神経活動及び各種除神経を併用することで化学物質受容の情報伝達(腸-脳相関)の神経経路を明らかにする。 さらに、同様の実験を高脂肪食給餌ラットでも行い、肥満等代謝障害によりどのように化学物質受容機構の破綻がおこるかを解析し、代謝性疾患予防のための基礎的知見を提出する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験計画により行った実験計画の結果から、新たに作業仮説を検証しなければならない実験を行う必要が生じた。そこで、令和4年度に実施予定であった神経回路網の解析を実施する必要が出てきた。このため、実験遂行のために新たな試薬の購入が必要となったため、前倒し支払い請求をすることとしたい。
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Research Products
(6 results)