2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on effects of essential oil on autonomic and central nervous system
Project/Area Number |
20K11562
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
佐藤 忠章 国際医療福祉大学, 薬学部, 准教授 (80287549)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アロマセラピー / 植物精油 / 自律神経 / 血圧 / 心拍数 / 心拍変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物精油が自律神経に与える影響を基礎研究の点から明らかにすることを目的とし研究を行った。 伝統的に自律神経を整える作用があると言われている植物精油の一つにゼラニウム精油がある。そこでゼラニウム精油が吸入投与によって血圧と心拍数に与える影響について検討を行った。マウスは麻酔下で非観血式血圧計により血圧と心拍数を測定した。その結果、ゼラニウム精油(5 μL/L air)の吸入投与によって、マウスの心拍数と血圧に有意な低下が認められた。さらに、ゼラニウム精油成分であるリナロールが脳内からの検出を確認することができた。 次にリナロール(5 μL/L air)の吸入投与における効果を検討したところ、明確な影響は認められなかった。そこで、リナロールは腹腔内投与において脳内移行性が高いことが先行研究において明らかとなっていたことから、腹腔内投与により検討を行った。その結果、リナロールは腹腔内投与において、30 μL/mouseでは心拍数の有意な増加、3 μL/mouseでは血圧の有意な増加が認められた。 一方、これまでの研究ではマウスが動かない状態で非観血式血圧計により測定していたことから麻酔が必要であった。しかし、麻酔薬が血圧と心拍数に及ぼす影響は通常の意識下における影響とは異なることが考えられた。そこで、麻酔下ではなく意識下で測定可能なパルスオキシメータによる測定を検討した。リナロール(30 μL/mouse)の投与方法は、腹腔内投与と皮下投与を使用した。その結果、有意差は認められなかったものの、リナロール投与群において共に心拍数の低下傾向が認められた。 以上のことから、ゼラニウム精油の吸入による血圧と心拍数の低下は、リナロールに依存し、リナロールが脳内へ移行することにより作用していると考える。このことが、ゼラニウム精油が自律神経を整える作用に関係していると考えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた植物精油成分による明確な影響が今のところ明らかになってはいないが、安定した測定を行うことのできる環境が整ってきたため、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、植物精油のゼラニウム精油とその成分のリナロールが心拍数や血圧に及ぼす影響について明らかにしてきた。しかし、最終目標である自律神経に及ぼす影響を明確にするためには、心拍変動を測定する必要がある。心拍変動を測定するためには、麻酔薬の影響のない覚醒下で心拍を測定する必要がある。 今回、覚醒下における心拍変動を測定し、記録できる条件が整ったため、さらに、心拍変動を測定するためのマウスの環境を整える予定である。マウスは小さな動物であることから、少しの環境の変化がストレスになり影響を及ぼす可能性がある。また、マウスの首に付けたパルスオキシメータによって心拍を測定するため、少しの動きが測定に影響を及ぼすことが考えられる。これらの影響を一つ一つ解決して安定した心拍を測定し、心拍変動を測定したいと考えている。 安定した心拍変動を測定することができるようになれば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のフルオキセチンやベンゾジアゼピン系抗不安薬のジアゼパムなどとの比較を行い、ゼラニウム精油が心拍変動に及ぼす影響を明らかにする予定である。 なお、今回、パルスオキシメータによる測定を選択したのは、マウスにできる限り負担の少ない、ストレスの少ない状態で心拍を測定することを目指したためである。
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Causes of Carryover |
前倒し支払請求により新たに購入したPowerLabの条件設定の検討に時間を要し、予定よりも購入するマウスの数が少なくなってしまった。条件が整えば、今後、予定通りのマウスを使用して研究を進める予定である。
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Research Products
(2 results)