2020 Fiscal Year Research-status Report
食品成分を利用したご飯の低グライセミックインデックス化に関する研究
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20K11566
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 眞治 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (70211943)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グライセミックインデックス / 血糖値 / 桑葉 / 二糖類分解酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
桑葉には摂食後の血糖値上昇を抑制するデオキシノジリマイシン(DNJ)が含有している。DNJは小腸粘膜上皮細胞に存在するα-グルコシダーゼの働きを阻害し、食後の急速な血糖値の上昇を抑制する作用を有している。桑葉には種々の機能性ポリフェノールが含有しており、血糖値上昇抑制作用に影響を及ぼす可能性がある。そこで、DNJ、桑葉、桑関連試料を用いてin vitroとin vivo試験を行ない、α-グリコシダーゼ阻害作用に対する影響について検討を行った。桑葉と桑関連試料のDNJ量をLC-MS/MSを用いて測定した。α-グリコシダーゼを含むラット小腸粘膜ホモジネート溶液にマルトースとDNJ、あるいは桑葉、あるいは桑関連試料を添加し、α-グリコシダーゼ阻害作用のin vitro試験を行なった。実験日前日にセボフルラン麻酔下、右頸静脈にカニューレを施したWistar系雄性ラットを用いてin vivo試験を行った。マルトース単独投与群、マルトース+DNJ投与群、マルトース+桑葉投与群、マルトース+桑関連試料投与群に分け、血糖値上昇抑制効果に対する影響について検討を行った。桑葉と桑関連試料のDNJ量は、それぞれ3.7±0.2 mg/gと1.5±0.2 mg/gであった。in vitro試験を行った結果、桑葉及び桑関連試料の濃度が高くなるに従って、DNJによるα-グリコシダーゼ阻害が抑制されることが明らかとなった。さらに、in vivo実験において桑葉併用投与群群と桑関連試料併用投与群群の血糖値の上昇抑制はDNJ併用投与群群よりも弱いことが判明した。これらの結果は、桑葉と桑関連試料にはDNJのα-グリコシダーゼ阻害作用を抑制させる成分が含有しており、DNJの血糖値上昇抑制効果を減弱させることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グライセミックインデックス(GI)とは、ブドウ糖50 gを摂取した後の血糖値時間曲線下面積の値(AUC)を100として、糖質50 gを含む食品を摂取した後のAUCより算出される。血糖値上昇が緩やかな低GI食品は、糖尿病性神経障害・網膜症・腎症などの合併症の発症予防に効果的であるが、高GI食品は、肥満症などの有病率と重症度を増加させることが報告されている。しかし、食品のGIは固有な値ではなく、種々の要因によって大きく変動する。特に米飯のGIは、米穀の種類・調理方法・加工方法の違いによって、7~132と非常に大きくGIが変動するにも拘らず、高GI食品に分類されているのが現状である。本研究は、食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分の摂取による米飯のGIの変動について詳細な検討を行い、米飯のGIが各食品成分の摂取によって低下することを示し、米飯のGIが固有の値ではなく、食品成分の摂取によって低GI化が可能であることを実証することを目的にしている。今年度は、二糖類分解酵素であるα-グリコシダーゼ阻害作用を有する桑葉と桑葉を摂食して体内にデオキシノジリマイシン(DNJ)を含有している桑葉関連試料である蚕幼虫に着目して実験を行った。桑関連試料である蚕幼虫のDNJ含有量は桑葉の含有量よりも低いことが明らかとなった。ラット小腸粘膜ホモジネート溶液にマルトースと桑関連試料を添加し、α-グリコシダーゼ阻害作用のin vitro試験を行なった結果、DNJによるα-グリコシダーゼ阻害が抑制されることが明らかとなった。さらに、in vivo実験において桑関連試料併用投与群の血糖値の上昇抑制はマルトース単独投与群よりも弱いことが判明した。これらの結果は、桑関連試料にはα-グリコシダーゼの作用を抑制する成分が含有している可能性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
国民健康・栄養調査の結果によると、「40~74歳男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリック症候群が強く疑われる者または予備群である」と報告されている。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などのメタボリック症候群を予防するためには、内臓脂肪蓄積型の肥満症の発症を予防し、インスリン抵抗性の惹起を阻止することが非常に重要である。インスリン抵抗性を伴う糖尿病や糖尿病性合併症は、血糖値の上昇を十分にコントロールすることによってその発症を予防することが可能になる。即ち、摂食後の血糖値上昇の穏やかな食品を積極的に摂取することや抗酸化物質を積極的に摂取することにより、インスリン抵抗性を伴う病気の発症予防が可能になると考えられている。米飯は血糖値が上がり易い高GI食品であるため、メタボリック症候群の発症予防には適さない食品であり、肥満症を招く恐れのある食品とみなされている。米飯のGIは、米穀の種類・調理方法・加工方法の違いによって、非常に大きく変動することが報告されている。単糖類であるグルコースを多く含む食品や水分を多く含む食品を摂取すると、食物が素早く小腸へ移動するために血糖値が急激に上昇する。逆に、食物繊維・タンパク質・脂質を多く含む食品を摂取すると、インクレチンなどの消化管ホルモンの作用によって食物が胃に滞留するために血糖値の上昇が緩やかになる。このように、食品のGIの値はその食品を単独で与えた場合の値であるが、複数の食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分を同時に摂取させた場合にGIが大きく変動する。本研究は、食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分の摂取による米飯のGIの変動について詳細な検討を行い、米飯のGIが各食品成分の摂取によって低下することを実証し、米飯のGIが固有の値ではなく、食物繊維・タンパク質・脂質など食品成分の摂取によって低GI化が可能であることを示すことである。
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