2021 Fiscal Year Research-status Report
食品成分を利用したご飯の低グライセミックインデックス化に関する研究
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20K11566
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
佐藤 眞治 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (70211943)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グライセミックインデックス / 血糖値 / セカンドミール効果 / 食品成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食後の血糖値上昇が緩やかな低GI食品は、糖尿病性神経障害、網膜症、腎症などの合併症の発症予防に効果的であり、高GI食品は、肥満症などの有病率と重症度を増加させることが報告されている。セカンドミール効果とは、摂食後の血糖値の上昇がその前に摂食した食事の内容によって血糖値が変動する効果であり、血漿中遊離脂肪酸濃度が低く推移する食事を摂食した場合に血糖値の上昇が抑制される。このように、GIはその食品の固有な値ではなく、血漿中のエネルギー成分や食物繊維、タンパク質、脂質などの食品成分によって大きく変動する可能性がある。そこで、摂食後の血糖動態やセカンドミール効果に及ぼす食品成分の影響を明らかにすることを目的として検討を行った。実験日前日に右頸静脈にカニューレを施したWistar系雄性ラットを用いた。難消化性デキストリン、カラギナン、乳タンパク質、カゼイン、ホエイ、バリン、ロイシン、イソロイシンあるいは油脂とマルトースを併用経口投与後経時的に採血を行った。3時間後再びマルトースを経口投与し経時的に採血を行った。血糖値、血漿中インスリン濃度、血漿中遊離脂肪酸濃度を測定し、摂食後の血糖動態とセカンドミール効果に及ぼす食品成分の影響について検討を行った。1回目に生理食塩水だけを経口投与し、3時間後にマルトースを経口投与した後の血糖曲線下面積143 ± 11 mg/dL hは、1回目にマルトースを経口投与し、3時間後に再びマルトースを経口投与した後の値102 ± 15 mg/dL hよりも有意に高いことが判明し、1回目に糖質を摂取することによって、セカンドミール効果を期待できることが明らかとなった。難消化戦デキストリン、ロイシン、イソロイシン、油脂を併用経口投与した後の血糖曲線下面積は、マルトースを単独経口投与した後の値よりも有意に低いことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グライセミックインデックス(GI)とは、ブドウ糖50 gを摂取した後の血糖値時間曲線下面積の値(AUC)を100として、糖質50 gを含む食品を摂取した後のAUCより算出される。血糖値上昇が緩やかな低GI食品は、糖尿病性神経障害・網膜症・腎症などの合併症の発症予防に効果的であるが、高GI食品は、肥満症などの有病率と重症度を増加させることが報告されている。しかし、食品のGIは固有な値ではなく、種々の要因によって大きく変動する。特に米飯のGIは、米穀の種類・調理方法・加工方法の違いによって、7~132と非常に大きくGIが変動するにも拘らず、高GI食品に分類されているのが現状である。本研究は、糖質摂取後の血糖動態に及ぼす食物繊維、タンパク質、脂質などの影響について詳細な検討を行い、糖質摂取後の血糖値の上昇が各食品成分の摂取によって低下することを示し、米飯のGIが固有の値ではなく、食品成分の摂取によって低GI化が可能であることを実証することを目的にしている。今年度は、食物繊維として難消化性デキストリンとカラギナン、食品タンパク質として乳タンパク質、カゼイン、ホエイ、バリン、ロイシン、イソロイシン、脂質として油脂に着目して実験を行った。1回目に生理食塩水だけを経口投与し、3時間後にマルトースを経口投与した後の血糖曲線下面積は、1回目にマルトースを経口投与し、3時間後に再びマルトースを経口投与した後の値よりも有意に高いことが判明し、1回目に糖質を摂取することによって、セカンドミール効果を期待できることが明らかとなった。難消化戦デキストリン、ロイシン、イソロイシン、油脂を併用経口投与した後の血糖曲線下面積は、マルトースを単独経口投与した後の値よりも有意に低いことが判明し、糖質摂取後の血糖値の上昇は、食物繊維、食品タンパク質、脂質の併用摂取によって制御可能であることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
国民健康・栄養調査の結果によると、「40~74歳男性の2人に1人、女性の5人に1人が、メタボリック症候群が強く疑われる者または予備群である」と報告されている。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などのメタボリック症候群を予防するためには、内臓脂肪蓄積型の肥満症の発症を予防し、インスリン抵抗性の惹起を阻止することが非常に重要である。インスリン抵抗性を伴う糖尿病や糖尿病性合併症は、血糖値の上昇を十分にコントロールすることによってその発症を予防することが可能になる。即ち、摂食後の血糖値上昇の穏やかな食品を積極的に摂取することや抗酸化物質を積極的に摂取することにより、インスリン抵抗性を伴う病気の発症予防が可能になると考えられている。米飯は血糖値が上がり易い高GI食品であるため、メタボリック症候群の発症予防には適さない食品であり、肥満症を招く恐れのある食品とみなされている。米飯のGIは、米穀の種類・調理方法・加工方法の違いによって、非常に大きく変動することが報告されている。単糖類であるグルコースを多く含む食品や水分を多く含む食品を摂取すると、食物が素早く小腸へ移動するために血糖値が急激に上昇する。逆に、食物繊維・タンパク質・脂質を多く含む食品を摂取すると、インクレチンなどの消化管ホルモンの作用によって食物が胃に滞留するために血糖値の上昇が緩やかになる。このように、食品のGIの値はその食品を単独で与えた場合の値であるが、複数の食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分を同時に摂取させた場合にGIが大きく変動する。本研究は、食物繊維・タンパク質・脂質などの食品成分の摂取による米飯のGIの変動について詳細な検討を行い、米飯のGIが各食品成分の摂取によって低下することを実証し、米飯のGIが固有の値ではなく、食物繊維・タンパク質・脂質など食品成分の摂取によって低GI化が可能であることを示すことである。
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