2020 Fiscal Year Research-status Report
動脈硬化予防におけるストレス応答機構の重要性:鍵分子候補と食品成分の関連
Project/Area Number |
20K11575
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
岸本 良美 摂南大学, 農学部, 准教授 (70600477)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / ストレス応答 / HO-1 / Sestrin2 / 食品成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
動脈硬化の進展には酸化ストレスや炎症、小胞体ストレスが深く関与している。本研究では、ストレス誘導性の抗酸化・抗炎症因子であるヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)ならびにSestrin2が動脈硬化進展に関与する重要な分子であり、それらを標的としたポリフェノール類をはじめとする食品成分による動脈硬化予防作用が存在するという仮説について、培養細胞を用いた実験で検証を進めている。 初年度の本年度は、血管炎症のモデルとして、ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いて、過酸化水素、アンジオテンシンⅡ、TNF-α等の刺激因子を処理し、HO-1、Sestrin2のmRNA、タンパク質発現量を測定した。その結果、過酸化水素処理により、HO-1、Sestrin2のmRNA発現量が増加した。アンジオテンシンⅡ(≦1 μM、24時間)、TNF-α(≦10 ng/mL、24時間)処理ではHO-1、Sestrin2のmRNA発現量に影響がなかった。一方で、HO-1、Sestrin2の発現を誘導する食品成分の探索を進め、ポリフェノールの一種において、HO-1の発現上昇が認められたが、Sestrin2には影響しなかった。この成分が血管炎症を抑制しうるかを検討するために、24時間処理した後にTNF-α刺激を加えたところ、炎症性サイトカインやケモカイン、接着因子の発現抑制が認められた。また、HO-1と同じくNF-E2-related factor 2(Nrf2)によって調節されることが知られている抗酸化酵素NQO1やGCLMのmRNA発現も増加させた。これらの結果より、Sestrin2はHO-1とは別の機構で調節されている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト臍帯静脈内皮細胞HUVECを用いて、過酸化水素、アンジオテンシンⅡ、TNF-α等の刺激因子によるHO-1、Sestrin2の発現量への影響について検討できた。さらに、ポリフェノールの一種において、HO-1の発現を上昇させる物質を発見した。
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Strategy for Future Research Activity |
Sestrin2はHO-1とは別の機構で調節されている可能性が示唆されたため、Sestrin2を誘導する食品成分については、候補を増やして探索する。動脈硬化におけるHO-1、Sestrin2を介したストレス応答機構の役割を検討するため、HO-1、Sestrin2の発現をノックダウンしたうえで刺激因子を処理し、酸化ストレス、炎症、小胞体ストレス、代謝異常、アポトーシス等について影響を検討する。
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Causes of Carryover |
当初の想定よりも細胞や培地の購入回数が少なくて済んだため。今年度Sestrin2を誘導する食品成分の発見に至らなかったことから、次年度に候補成分を複数購入し、幅を広げて検討する予定である。
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