2020 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of nonalcoholic steatohepatitis with severe obesity and mechanism of improvement after surgery
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20K11586
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐々木 章 岩手医科大学, 医学部, 教授 (40275540)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅邑 晃 岩手医科大学, 医学部, 助教 (10749675)
石田 和之 獨協医科大学, 医学部, 教授 (40444004)
石垣 泰 岩手医科大学, 医学部, 教授 (50375002)
岩谷 岳 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (70405801)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肥満症 / 非アルコール性脂肪性肝炎 / 糖尿病 / へパトカイン / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、減量・代謝改善手術の一術式である腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(laparoscopic sleeve gastrectomy, LSG)を施行した高度肥満症で、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を合併した患者を対象にして、減量による肝線維化の改善機序とその臓器代謝ネットワークを解析することである。この解析には、LSG時に得られた肝組織標本による検討が最も情報量が多いと考える。申請者らはBMI≧35の高度肥満症患者のNASH合併率は海外の報告よりも高率であり、LSGの効果的な減量により肝線維化が改善すること、LSGにおける2型糖尿病の寛解率が78%と高率であること、術前の2型糖尿病寛解予測因子や寛解機序も報告してきた。高度肥満症患者に対する減量・代謝改善手術において、LSGにおける減量経過とともに経時的に肝組織学的評価を行った報告は海外でも少なく、特に日本人高度肥満症患者の肝組織を用いた研究は極めて少ない。日本人高度肥満のNASH併存率、肝線維化改善やそのメカニズムについてはこれまで確認されていないことから、本研究での試みは非常に画期的である。 LSGの症例集積、肝生検標本の病理組織学的評価、へパトカインの解析は順調に進行しており、今後は肝組織のプロテオミクス・メタボローム解析について研究を進める予定である。サンプル中に含まれる既知の脂質以外にも未知な脂質の構造推定が可能であり、高精度な定量値算出による比較も可能と考えている。本研究の研究成果により、臓器代謝ネットワークの視点からも解析を行うことで、内科治療より効果的かつ持続的なLSGの減量効果による肝線維化の改善機序が明確となれば、NASHの新治療法の開発につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LSGの適応は、6か月以上の内科治療で効果が得られないBMI≧35で2型糖尿病、高血圧症、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上を合併している高度肥満症患者として、インフォームド・コンセント後にLSGを実施している。当院では、新型コロナウィルス感染症による診療・手術制限がない状況から、検体保管中の60名を含めて、研究期間中の目標症例数(LSG )20名について、症例集積が順調に進んでいる。臨床検査項目は、NASHおよび2型糖尿病のパラメーター、減量成績、腹部CTによる内臓脂肪量、肝容積、膵容積、CT値であるが、中間解析は終了している。 NASHと診断されたLSG患者に肝生検を経時的に施行することで、脂肪化や線維化の改善が脂質代謝の改善により起こっていることを科学的に解明することができると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
肝臓由来の分泌タンパク質であるヘパトカイン(SePP、LECT2)を測定して、2型糖尿病とNASH寛解との相関についての解析が終了し、英文論文を執筆中である。2021年度後期よりLSGで得られた肝組織のプロテオミクス解析を行い、高度肥満症患者の肝組織に特徴的な蛋白プロファイルを検討する予定であったが、2021年度前期から解析を始める予定である。 また、血液検体からLC-MS脂質解析を追加して行い、メタボローム解析で得られた結果から有意に変化していた脂質を特定する。特定された脂質を標的にして、肝組織検体でも同様の検討を行う予定である。LSG時の肝生検で得られた肝組織は、ヘマトキシリン-エオジン染色とエラスチカ-マッソン染色を行い、Brunt分類、NASH activity scoreと、当院の肝病理診断医が開発したpericellular fibrosis scoreで評価しているが、2021年度後期からは、免疫染色でMMP(マトリックスメタロ プロテアーゼ)、TIMP(Tissue Inhibitor of Metalloproteinase)、FGF-19・21(繊維芽細胞増殖因子-19・21)、VEGF-A(血管内皮増殖因子-A)の発現を確認する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度の研究経費は、ほぼ予定通り使用している。
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Research Products
(8 results)