2021 Fiscal Year Research-status Report
Involvement of glycation stress, sleep and melatonin in amyloid beta aggregation
Project/Area Number |
20K11593
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
米井 嘉一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40191655)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 認知症 / amyloid-β(Aβ) / Aβクリアランス / 糖化ストレス / メラトニン / ミクログリア / 睡眠の質 / Aβ40/42比 |
Outline of Annual Research Achievements |
Amyloid-β(Aβ)クリアランス障害は認知症(特にアルツハイマー型)の進展に大きく関わり、また、糖尿病(糖化ストレス)と睡眠の質の低下(メラトニン分泌低下)は認知症の進行に促進的に作用する。本研究の目的は、Aβクリアランスにおける糖化とメラトニンの影響の検証である。臨床データの解析により、血漿Aβ40/42は糖化ストレス強者、「睡眠の質」低下者で上昇することが示された。培養細胞を用いた実験では、マクロファージとミクログリアとのAβ貪食能の差異、Aβと糖化Aβとの貪食能の差異、Aβ貪食能に対するメラトニンの作用を検証した。培養細胞は、マクロファージ系培養細胞RAW264.7(理化学研究所)とSDラット由来初代ミクログリア(MGSD)(コスモ・バイオ)を、Aβは蛍光標識TAMRA-Aβ (1-42)(コスモ・バイオ)を使用した。糖化Aβは、Aβと2mMまたは10mMメチルグリオキサールと 25℃、一晩反応させてして作成した。Aβ貪食能は、細胞内に取り込まれたTAMRA-Aβ蛍光陽性細胞数として評価した。実験の結果、Aβ貪食はMGSDでは認められたが、RAW264.7では確認できなかった。MGSDのAβ貪食は、糖化Aβに対しては顕著に低下した。Aβ添加時には、対照に比べてMGSDの増殖傾向がみられ、毒性は認められなかった。メラトニン添加によってMGSDのAβ貪食能は促進されたが、糖化Aβ貪食能には差がなかった。評価結果は一つの細胞当たりの貪食能を反映しているため、細胞毒性/細胞障害の評価に当たっては、細胞増殖への影響を考慮する必要がある。結論として、糖化ストレスと睡眠の質がAβクリアランスへ影響する機序としてのミクログリアのAβ貪食能が関与すること、アルツハイマー型認知症の進展予防のためには、Aβの糖化予防と「睡眠の質」向上が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
①AβおよびAβ糖化生成物に対するミクログリアの作用 ミクログリアに関する調査の結果、Aβ取り込みによる炎症性サイトカイン(IL-1β, TNFα, INFγ)分泌作用以外に、成長因子(IGF-I, TGFα)を分泌し中枢神経恒常性維持の役割を担うという二面性が明らかになった。Aβ添加によって培養液中のTNFα増加することは確認できるが、Aβがミクログアリア(MGSD)により貪食されるとともに、細胞の分裂増殖を促す。培養経過に伴い群間で細胞数、形状に差が生じるため、細胞数を合わせての群間定量比較が困難であることがわかった。実験を重ねた結果、生理条件ではAβがMGSDを増殖させAβクリアランスの恒常性を維持すること、糖化AβはMGSDを増やすものの貪食できないため、クリアランスが低下して脳内Aβ蓄積量が増える可能性が示唆された。さらにメラトニンがMGSDのAβ貪食を促進することが示された。本所見は、糖化ストレスの強いい代表疾患である糖尿病患者では、脳内に糖化Aβが生成され、ミクログリアによって貪食されずに脳内に蓄積し、アルツハイマー型認知症を進展させることを示す画期的な成果である。今後はこの仮説を裏付ける所見を得るために実験計画を練る予定である。 ②自立高齢者集団にける血清中Aβおよび尿中メラトニン代謝産物の解析 1日歩行数が多く、糖化ストレスが少ない集団では、血漿Aβ40/42が低く、メラトニン代謝が多いことを示唆する情報が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
糖化AβはMGSDを増やすものの貪食できないため、クリアランスが低下して脳内Aβ蓄積量が増える可能性が示唆された。さらにメラトニンがMGSDのAβ貪食を促進することが示された。本所見は、糖化ストレスの強い代表疾患である糖尿病患者では、脳内に糖化Aβが生成され、ミクログリアによって貪食されずに脳内に蓄積し、アルツハイマー型認知症を進展させることを示す画期的な成果である。令和4年度はこれらの実験データをまとめて、論文化する。 Aβクリアランスの指標である血漿Aβ40/42について、比較的清潔習慣の整った中高年集団(大学教職員)、運動量が多く糖化ストレスの少ない高齢者集団、「睡眠の質」低下者集団のアイデで比較解析した結果、糖化ストレスが高い者、「睡眠の質」低下者ではAβ40/42が上昇し、Aβクリアランスが低下していた。これらの臨床所見は、上述のミクログリアのAβ貪食実験成績と相反しない。 我々は、睡眠の質とミクログリアのAβ貪食を結ぶ経路として、メラトニン以外の物質の関与を想定している。それは腸内細菌叢を介した腸管連関である。予備試験では、ビフィズス菌が産生するエクソソーム(EV)と大腸菌が産生するEVでは、ミクログリアのAβ貪食への作用が異なる。次年度に向けた科研費申請では、EVを介した腸脳連関をからめ研究計画を予定している。ミクログリアのAβ貪食を活性化するEVを探索したい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の折、国内旅費として予算計上していた分が主に次年度使用額として生じている。翌年度の成果発表(学会・論文)で使用したいと考えている。
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Research Products
(3 results)