2020 Fiscal Year Research-status Report
エストロゲンによる快楽性糖摂取行動促進作用のメカニズムと恒常性摂食調節との連関
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20K11604
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (00264755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (30220081)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エストロゲン / 快楽性摂取行動 / 恒常性摂取行動 / 報酬系 / 視床下部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず、エストロゲンによるスクロース摂取亢進のメカニズムを明らかにするために、卵巣摘出ラットにエストロゲンを補充し、以下の溶液を摂取させ、その摂取量をエストロゲン欠乏ラットと比較した。摂取させた溶液は、糖質であるスクロース、グルコース、フルクトース、人工甘味料であるアスパルテーム、スクラロース/アセスルファムK混合溶液である。 その結果、スクロース、グルコースの摂取量だけではなく、人工甘味料摂取量においてもエストロゲン補充ラットでエストロゲン欠乏ラットよりも有意に多かった。従って、エストロゲンによるスクロース摂取亢進は、エネルギー摂取のための恒常性調節ではなく、快楽性調節によるものであることが示された。また、エストロゲン補充群では、スクロース、グルコース摂取時にも餌からの摂取エネルギーは少なかったが、これら糖質の摂取によるエネルギー摂取量が多かったため、餌のみを摂取したときにみられるエストロゲンのエネルギー摂取抑制が消失した。以上より、エストロゲンの恒常性のエネルギー摂取抑制作用に快楽性の調節が影響を及ぼすことが明らかになった。しかし、エストロゲンは、フルクトース摂取に対しては影響しなかった。その原因は未だ不明だが、代謝経路の違いによるものではないかと考えられる。 次に、報酬系において主要な機能部位である側坐核shellへμオピオイド受容体作動薬であるDAMGOまたはオピオイド受容体拮抗薬であるナルトレキソンを局所注入し、スクロース摂取量を測定した。その結果、スクロース摂取は、DAMGO投与により生理食塩水投与時よりも増加し、ナルトレキソン投与により減少した。エストロゲンのスクロース摂取亢進に側坐核脳内μオピオイド受容体が関与している可能性が示されたので、今後はエストロゲンのμオピオイド受容体に及ぼす作用について検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間のうち4月から7月までコロナウイルス感染予防のため入構不可となっており、その後も様々な制約により実験が行えず、研究の進展が予定よりも遅れた。しかし、今後の研究を行う上での基本的な実験ができたので、その結果に基づいて研究を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの行った実験より、エストロゲンは快楽性の甘味溶液摂取を亢進させること、また、側坐核shellへのμオピオイド受容体が甘味溶液の摂取に関与していることが明らかになったので、エストロゲンによる甘味溶液摂取亢進における側坐核shellのμオピオイド受容体の関与について実験を進めていく。 また、当初計画のとおり、恒常性調節と快楽性調説の連関について検討をするために、摂取行動を変化させる2-Deoxy-D-glucoseやレプチンの投与を行い、その際の餌からのエネルギー摂取とスクロース溶液からのエネルギー摂取の変化を検討する実験を計画する。
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Research Products
(5 results)