2020 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病と加齢性難聴に共通するシナプス機能低下の分子メカニズム解析
Project/Area Number |
20K11618
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
南 竜之介 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90806895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 永美 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 研究員 (60421898) [Withdrawn]
津田 玲生 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 認知症先進医療開発センター, 室長 (30333355)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 加齢性難聴 / シナプス機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究室では, アルツハイマー病 (AD) の原因因子である Aβ を内耳有毛細胞で発現する Tg マウス (Math1E- Aβ42Arc) を作製し, Aβ の神経毒性を聴力の低下としてモニターできるシステムが開発されている. このマウスは生後4ヶ月で高音刺激特異的な聴力低下を示すが, その分子機構は明らかになっていない. Math1E-Aβ42Arc の内耳有毛細胞では, 変性やシナプス数の減少は観察されないことから, このマウスの聴力低下はシナプス機能低下に起因すると予想している. 本年度は, AD と難聴に共通して働く因子である, シナプス小胞リサイクリングに重要なイノシトールリン脂質 PI(4,5)P2 の代謝および代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)7 が Math1E- Aβ42Arc による聴覚受容の低下に関与する可能性を探った. Synj2との相互作用を観察する前段階として, mix background で予備的に聴性脳幹反応を解析した結果では, Synj2変異を持つマウス(Synj2/+)は, 高音域における聴力が低下する傾向が観察された. そこで, Math1E-Aβ42Arc のbackground で Synj2 変異を導入したところ(Math1E-Aβ42Arc ; Synj2/+), Aβによる高音域特異的な聴力低下に対する抑制傾向が一部で観察された. この解釈として, 高音域の刺激応答に対するPI(4,5)P2 の要求性について至適濃度の存在が予想される. PI(4,5)P2 の至適濃度に対してSynj2/+では高くなり, Math1E-Aβ42Arcでは逆に低くなることにより, 聴力の低下が生じていると考えられる. 今後はPLC 阻害剤を摂取させる薬理学的な手法などを用いて PI(4,5)P2 発現調節の効果を検証する必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症への対応として, 今年度前期から所属機関が確りと取り組んでいた, 新規の解析や出勤人員の制限を遵守したため, 研究計画にやや遅れが生じている. さらに, 年度後期には研究代表者の所属機関移動に伴う手続きなども重なり, 初年度実施予定のプロジェクト進行にやや遅れが生じている.
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度までの解析から, 内耳有毛細胞においてシナプス形態の縮小が観察されており, シナプス機能調節に変化が生じている可能性が示唆された. そこで, シナプス形態変化およびシナプス小胞動態変化を組織化学的に解析する. また, シナプス小胞の状態にも注目し, 脂質二重膜を可逆的に染める蛍光色素を用いて, エンドサイトーシス動態を解析する. 同時に, 生化学的アプローチにより, AD モデルマウスの内耳における PI(4,5)P2 の発現量変化と聴力低下との関係について検証する.
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Causes of Carryover |
走査型電子顕微鏡を用いて内耳有毛細胞の感覚毛を観察するために, 試料調整の過程で凍結乾燥が必要となる. そこで初年度に t-ブタノール用 凍結乾燥装置の購入を予定していたが, 購入を見合わせて, より経費を抑えることができる他大学研究機関の共通機器を利用することにしたために次年度使用額が生じた.
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