2020 Fiscal Year Research-status Report
魚油のオメガ3脂肪酸が不整脈予防効果を示す分子機序の解明
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20K11636
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
森島 真幸 近畿大学, 農学部, 講師 (40437934)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 心房細動 / EPA / L型カルシウムチャネル / 自動拍動 |
Outline of Annual Research Achievements |
心房細動は心原性脳塞栓症の原因として生命予後とQOL低下に関与するため、その予防方法の確立は急務である。疫学研究において、魚油に含まれるオメガ3脂肪酸の摂取が心房細動の発症率を減少させることが報告されているが、その分子機序は明らかではない。本研究では、動物モデルと初代培養マウス心筋細胞を用いてオメガ3脂肪酸による心筋イオンチャネルの発現制御メカニズムに焦点をおき、オメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸;EPA)が心筋イオンチャネルの発現制御を介して心房細動の発症や持続を予防する新たな因子となりうるとの仮説の証明を行った。 初代培養マウス心筋細胞を単離し、飽和脂肪酸を負荷することで細胞障害を惹起した。EPAを併用投与すると、飽和脂肪酸による心筋細胞内への脂肪滴蓄積、ROS産生、ミトコンドリア障害が予防されることがわかった。さらに、EPAは心筋細胞の自動拍動能を回復させ、ペースメーカーイオンチャネル群(HCN4, KCNJ3, CACNA1C)のmRNA発現異常も回復させた。さらに、EPAは心筋L型カルシウムチャネル(Cav1.2, Cav1.3)の発現異常、及びL型カルシウム電流の異常を回復させることがわかった。さらに、L型カルシウムチャネル発現の制御に関わる転写因子CREBについての解析をおこなったところ、EPAにより転写活性が安定化される可能性が示唆された。 以上の結果から、EPAは飽和脂肪酸負荷による心筋の興奮性変調に対する保護作用を示すことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の実験計画のとおり、in vitroで心房細動発症時の心筋の病態を模擬するために、初代培養マウスの心筋細胞に飽和脂肪酸負荷(高脂肪負荷)を行い細胞障害を誘発させてEPAの作用を検証した。当初は、心房細動が誘発される血中脂肪酸濃度から飽和脂肪酸の細胞への添加量を算出し実験を開始したが、飽和脂肪酸やEPAの使用濃度が高すぎると心筋細胞の細胞膜が漸弱化し、パッチクランプ法によるL型カルシウム電流の計測が不可能であったため、飽和脂肪酸とEPAの使用濃度の検討を行うため様々な濃度で実験を行い濃度依存性変化を検証した。このため、本研究で使用する飽和脂肪酸とEPAの濃度が固定され、様々な細胞実験がスムーズに進んだ。また、心房細動による電気的リモデリングが生じた心筋で変動するイオンチャネル群のmRNA発現解析を網羅的に実施したため、候補となるイオンチャネルを絞り込み、細胞内分子メカニズムの研究を開始する準備ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、飽和脂肪酸による心筋興奮性変調に対するEPAの作用について、ターゲットとなるイオンチャネルの絞り込みができたため、今年度はEPAのL型カルシウムチャネル発現制御機構の細胞内分子メカニズムに焦点をあてて研究を実施する。具体的には、L型カルシウムチャネル(Cav1.2,Cav1.3)の転写制御機構を解明するために、転写因子の発現解析やライブセルイメージング実験による局在変化を検証する。また、EPAが細胞膜でのL型カルシウムチャネルタンパクの安定化に及ぼす影響を調べる。さらに、高脂肪食負荷によるAFモデルマウスを作製し、EPAを投与した後心房組織からTotal RNAを抽出し、イオンチャネルや転写因子の発現解析を行う。さらに、同モデルマウスの心臓を灌流し、ex vivoで心機能の解析を行いEPAがAF発症の上流にはたらく新規の因子であることを証明する。
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Research Products
(7 results)