2020 Fiscal Year Research-status Report
干し柿由来タンニンの腸内細菌による健康増進効果発現機構の解明
Project/Area Number |
20K11638
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Research Institution | Kio University |
Principal Investigator |
栢野 新市 畿央大学, 健康科学部, 教授 (40412150)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境科学系, 教授 (60291598)
松村 羊子 畿央大学, 健康科学部, 教授 (80412154)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | タンニン / 人口消化 / ORAC / HPLC |
Outline of Annual Research Achievements |
渋柿の渋み成分であるタンニンは強い抗酸化性を有するため健康増進効果が期待されるが、これまで食品としてはほとんど利用されておらず、また摂取した際に生体に及ぼす作用についてもほとんど研究されていない。われわれのこれまでの検討において、タンニンが消化のプロセスによって分解され、生成した低分子化合物が生体に対する抗酸化性を発現しいる可能性が示唆されている。本研究では、渋柿より精製した高濃度タンニン粉末を対象とし、生体に対して抗酸化性を発現する際に、体内での消化プロセス、および腸内細菌が関与するメカニズムを明らかにすることを目的としている。 2020年度においては、高濃度タンニン粉末を消化モデル実験で処理することにより抗酸化性の発現に変化が認められるかについて検討を行った。以前の検討においては干し柿の不溶性画分を懸濁させてin vitroの消化モデルで処理していたが、今回は試料をタンニンに変更したため前処理方法について変更を行った。タンニン粉末を水に懸濁後、オートクレーブを用いて加圧下で加熱し強制的に可溶化した。次にこの溶液にα-アミラーゼを加えて5分間処理して口腔モデルとした。続いてpHを2.0に調整後、ペプシンで60分間処理し胃モデルとした。さらにpHを6.5に調整後、胆汁酸及びパンクレアチンを加えて6時間処理し、小腸モデルとした。各モデル段階で処理後のORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)を処理して抗酸化性を評価した結果、小腸モデル後でORAC値の顕著な上昇が認められた。また小腸モデル後の溶液についてHPCL分析を行った結果、処理前には存在しなかった複数のピークが検出された。 以上の結果より、タンニンは小腸段階において分解され、抗酸化性を発現する低分子化合物が生成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料をこれまでの研究で使用していた干し柿の不溶性画分(抽出残渣)から、渋柿から精製された高濃度タンニン粉末に変更して人工消化実験を行った。その結果、ORACを指標とした抗酸化性が上昇したことや、処理後にHPLCの新たなピークが検出されたことから、予想通り消化のプロセスにおいてタンニンが分解して低分子化合物が生成する可能性が確認された。しかし、これまでの検討とはことなり、小腸レベルにおいてすでにタンニンが分解することは予想外であった。これは以前の研究において用いた試料との違いや、前処理条件を変更したことよるのではないかと推察される。
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Strategy for Future Research Activity |
人工消化の小腸レベルにおいて生成する低分子化合物を明らかにする。具体的には、消化モデル処理によって生成する低分子化合物をHPLC分析によって特定し、それらを種々のクロマトグラフィーによって精製・単離してHMRによる構造解析を行い、その化学構造を明らかにする。また単離した化合物の抗酸化性をORAC等によって評価する。さらに小腸レベル処理物について、腸内細菌株を用いた大腸モデルによる処理を行い、小腸レベルで生成した低分子化合物の微生物による変換やそれに伴う抗酸化性の変化が起こるのかについて検討する。
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Causes of Carryover |
経費の節約、および一部の実験の実施延期のため
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Research Products
(1 results)