2020 Fiscal Year Research-status Report
Cancer chemoprevention by using diarylpentanoid analog of curcumin as a functional food
Project/Area Number |
20K11643
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
柴田 浩行 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (50260071)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | クルクミン / 食品 / がん免疫 / 制御性T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
食用されるクルクミンは癌細胞に対する殺細胞効果に加えて、腫瘍の微小環境における腫瘍免疫を負に制御している制御性T細胞(Treg)の形成を抑制する。我々が合成したディアリルペンタノイドである新規のクルクミン誘導体はクルクミンの数倍から30倍の抗腫瘍活性が存在する。この中で最強の抗腫瘍活性を有するGO-Y030についてTreg抑制活性を検証した。試験管内でマウスの脾臓由来のT細胞に対してTGF-βを添加し、Foxp3陽性T細胞を誘導した。この時、100 nM GO-Y030を加えるとFoxp3陽性T細胞の誘導は有意に抑制された。その抑制活性はクルクミンの10倍と見積もられた。クルクミンによるTreg誘導はTGF-β/SMAD3パスウェイを介することが知られている。我々はGO-Y030のTGF-β/SMAD3パスウェイへの影響を調べた。GO-Y030によるTreg誘導はTGF-β/SMAD3パスウェイとは異なることが判明した。別の可能性としてHistone Acetyltransferase p300によるNF-kBパスウェイへの影響を調査した。その結果、GO-Y030はHistone Acetyltransferase p300のプロモーター活性を低下させることが判明した。さらに、GO-Y030は250 nMにおいてCD4+CD25+T細胞におけるFoxP3の発現を低下させた。これはクルクミンの4分の1以下の濃度であった。また、Tregは抑制性サイトカインであるTGF-βやIL-10を発現しているが、GO-Y030はこれらの抑制性サイトカインの発現を有意に抑制した。以上のように新規合成ディアリルペンタノイド型クルクミン誘導体はクルクミンよりも強力なTreg抑制作用があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規合成ディアリルペンタノイド型クルクミン誘導体は試験管内で、クルクミンよりも強力な制御性T細胞(Treg)の抑制作用があることを示した。我々の目的はディアリルペンタノイド型クルクミン誘導体が、腫瘍免疫を負に制御しているTregの形成や機能を抑制することで腫瘍免疫賦活剤として機能していることを証明することにある。これまでの研究において、上記の作用があることは明瞭に示された。その点において研究は順調に進行していると評価できる。さらに、ディアリルペンタノイド型クルクミン誘導体が生体内で腫瘍免疫賦活剤として機能しているかを検証する必要がある。そのためにマウスモデルにディアリルペンタノイド型クルクミン誘導体を経口投与し、消化管を多数サンプリングした。これらの標本において免疫担当細胞がどのような挙動をしているか、現在、免疫組織化学的手法をもって解析を行なっているが、解析方法のブラッシュアップを含めて調整中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
胃癌モデルマウスにおけるTreg誘導の状態:2-1. 担癌マウスにおけるTreg誘導状況の検証:GanマウスはWntシグナル、COX2、及びProstagla ndin E Synthaseを過剰発現させたトランスジェニックマウスである。コントロール食のHigh Fat Dietで飼育すると15週令で25%、18週令で83% 、20週令では92%に胃癌を発症する。このマウスから週令ごとに全血採取してTregをFACSで解析する。また、胃癌や、その周囲の粘膜、さらに 小腸粘膜をメスでスクレープし、トリプシン処理してリンパ球の浮遊液を作成し、FACS解析でTregの出現頻度を解析する。2-2. Ganマウスにお ける癌免疫予防実験:体重30 gのマウスにGO-Y化合物を各種濃度で投与する。2-2-1. 離乳後のGanマウスに強制給餌でメチルセルロースに溶解 したGO-Y030/GO-Y022を与える。投与量は10 ng, 1 μg, 100 μg/dayを投与する。2ヶ月投与し、胃癌発癌の頻度を調べる。対照群にはメチル セルロースのみを強制給餌する。2-2-2. 離乳後のGanマウスにGO-Y化合物を強制給餌して、Trge誘導状況を全血、及び胃粘膜、小腸粘膜で調べ る。2-2-3. 離乳後のGanマウスにGO-Y化合物を強制給餌して、胃腫瘍におけるTregの有無、癌細胞のPD-L1の発現状況、FACS解析などの病理学 的解析を行う。2-2-4. 離乳後のGanマウスにGO-Y化合物を強制給餌して、安全性(体重、AST, ALT, 総ビリルビン、クレアチニンなどの生化学 マーカー)を調べる。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスのパンデミックにより、国内旅行を含む学会出張などによる情報収集が一切できず、旅費の支出がなかった。加えて、研究室内への部外者の立ち入りも感染防護の観点から極端に制限を受けたため、アルバイト雇用による実験補助も制約を受けた。その結果、人件費の支出がなかった。これらによって研究計画遂行に遅滞が生じたので、実験資材の購入などへの支出が抑制された。これらの予算のうち、次年度繰越金462,691円は実施できなかった免疫組織化学的快晴のための抗体購入代金や消耗品費に262,691円を充当する。また、200,000円は講座で雇用している実験補助員の勤務外労働への謝金などとして支出し、新型コロナウイルスのパンデミック下における移動制限、雇用制限に対応する予定である。
|