2021 Fiscal Year Research-status Report
抗肥満・抗老化機能を担う成体神経幹細胞ニッチの解明
Project/Area Number |
20K11658
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
小谷 侑 藤田医科大学, 医学部, 講師 (60644622)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 葉子 岐阜医療科学大学, 薬学部, 教授 (20319263)
長崎 弘 藤田医科大学, 医学部, 教授 (30420384)
河田 美穂 藤田医科大学, 医学部, 助教 (90761601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視床下部 / 神経幹細胞 / タニサイト / ES細胞 / Rax |
Outline of Annual Research Achievements |
成体視床下部に存在する神経幹細胞は、新たな視床下部ニューロンの産生やエクソソーム(細胞外分泌小胞)の分泌を介して、抗肥満・抗老化作用を発揮すると考えられている。本研究では、成体視床下部幹細胞の実体とされるタニサイト(第三脳室の上衣細胞)に焦点を当て、本細胞の維持や機能調節に関わるニッチシグナル(環境因子)の解明を目的とする。 昨年度までの研究成果により、マウス胚性幹細胞(ES細胞)を用いた分化誘導系においてタニサイトの分化過程を再現し、神経上皮細胞→放射状グリア→タニサイトの順に段階的に分化が起こるタイミングを明らかにしている。この実験系では、視床下部幹細胞特異的な転写因子であるRax遺伝子にGFP遺伝子をヘテロノックインしたマウスES細胞株(Rax::GFP株)を用いることで、タニサイトを含む視床下部幹細胞系譜を可視化している。2021年度はまず、ES細胞由来タニサイトの幹細胞性を検討する目的で、種々の幹細胞マーカー(Sox2, Vimentin, Nestinなど)の発現を検討した。その結果、Rax::GFP陽性タニサイトは種々の幹細胞マーカーを発現するが、その発現強度は細胞ごとに大きくばらついており、一部のマーカーは非常に弱い発現を示した。また、Rax::GFPの発現が弱い細胞では神経細胞マーカーの発現が認められた。Rax::GFP株ではRax遺伝子の片方が恒常的にノックアウトされていることから、上記の結果より、Raxの発現がタニサイトの幹細胞性の維持に重要であることが示唆された。また、視床下部発生を制御する形態形成因子がタニサイトの幹細胞性の維持に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初計画では、2021年度中にタニサイト分化誘導系での経時的な遺伝子発現解析を行い、細胞分化や幹細胞機能の調節に関わるシグナル系を推定する予定であった。しかし本年度研究実績に記載した通り、既存のRax::GFP株ではRax遺伝子のヘテロノックアウトにより幹細胞マーカーを初めとする遺伝子の発現状態が攪乱され、タニサイトにおける生理的な遺伝子発現パターンを再現できていない可能性が高いと考えられた。そこで、遺伝子発現解析やニッチシグナルのスクリーニング実験を実施する前に、Rax遺伝子を破壊しない方法でタニサイトを蛍光標識するための新たなES細胞株の作製が必要と判断した。現在、ゲノム編集ツールを用いた新たなGFPノックイン細胞株の作製を計画しており、ドナーDNAの準備等を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Rax遺伝子を温存しつつES細胞由来タニサイトを蛍光標識するために、Rax遺伝子の下流にIRESまたはT2A配列を介してGFP遺伝子をノックインしたES細胞株を作製する。これにより、RaxとGFPがバイシストロニックに発現することで、分化誘導したタニサイトのGFP標識が可能となる。一般的にバイシストロニックな発現系では下流遺伝子の発現量が相対的に低下する場合があるため、近年報告された高輝度改変型GFP(mGreenLantern)をノックインすることで、タニサイトの検出低下を防止する。ES細胞へのノックインにはCRISPR/Cas9システムを利用し、近年報告された高効率なノックイン用のプロトコルを適用する。
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Causes of Carryover |
「現在までの進捗状況」に記載したように、当初計画には無かった実験を実施する必要性が生じ、 2021年度に実施する予定であった実験項目(遺伝子発現解析など)を次年度に持ち越した。よってこれらの実験に必要な物品費が次年度使用額として生じた。次年度に新たに請求した助成金については、当初の実験計画に従い、タニサイトの機能制御に関わるニッチシグナ因子の探索および機能評価実験に使用する。
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Research Products
(3 results)