2020 Fiscal Year Research-status Report
ナチュラルコンピューティングにおける実行の高速化を実現する計算手法
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20K11681
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤原 暁宏 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (10295008)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アルゴリズム / ナチュラルコンピューティング |
Outline of Annual Research Achievements |
ナチュラルコンピューティングの一つとして,生物の細胞などの生態系を計算のためのハードウェアとみなして計算を行うための研究が注目を集めている.しかしながら,理論的に計算可能とされていても,生体系をハードウェアとして仮定した場合の計算の実行速度についての検証はほとんど行われていなかった.本研究では,ナチュラルコンピューティングの現実世界での計算の実行速度に焦点を当て,高速に実行可能な問題解法(アルゴリズム)の提案を行う.また,提案アルゴリズムを実行可能な計算シミュレータを開発し,提案アルゴリズムの正当性,及び,実効性の検証を行うとともに,解の精度や計算速度についても評価を行う. 令和2年度は,以下のような内容を中心に研究を行なった. (1) ナチュラルコンピューティングにおける,現実的な仮定を考慮した計算モデルの提案:本研究では,実際の生化学反応に基づき,それぞれの生化学反応に必要な時間と資源量を考慮し,それらのパラメタを計算モデルに取り入れることにより,アルゴリズムの実行時間を正確に見積もることができる計算モデルと評価基準の提案を行なった. (2) ナチュラルコンピューティングにおける,高速実行可能なアルゴリズムの提案:(1)の計算モデルを用いて,ナチュラルコンピューティングにおいて高速実行可能な基本演算アルゴリズム,および,計算困難問題に対するアルゴリズムの提案を行なった.対象とした問題は,非常に重要な基本演算操作である整列,および,代表的計算困難問題であるナップサック問題であり,これらの問題に対して,高速に実行可能なデータ構造の提案を行うとともに,提案データ構造を用いて整列操作を実行するアルゴリズム,および,ナップサック問題を高速に解くアルゴリズムの提案を行なった.また,提案アルゴリズムをシミュレーション環境に実装し,提案アルゴリズムの正当性や有効性の検証を行なった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現実的な仮定を考慮した計算モデル,及び,その計算モデルに対するアルゴリズムの提案に関しては,国際的学術雑誌における1本の論文,および,国際会議における2本の発表として取りまとめることができた.これに加えて,提案アルゴリズムを実行可能なプロトタイプシミュレータをpythonを用いて構築し,提案アルゴリズムの正当性や有効性の検証を効率的に行うことができるようになった.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度については,以下のような研究に取り組みたいと考えている. 1. 基本演算,及び,計算困難問題に対するアルゴリズムの提案:令和2年度においては整列に対する高速実行可能なアルゴリズムの提案を行なったが,重要な基本演算としては,論理演算や辞書演算など他にも多くの基本演算が存在する.本研究では,各基本演算を高速に実行可能なデータ構造の提案を行うとともに,提案データ構造を用いて基本演算を高速に実行するアルゴリズムの提案と検証を行う予定である.また,提案した整列操作などの基本演算アルゴリズムを部分アルゴリズムとして用いて,計算困難問題に対する高速実行可能な問題の解法を提案したいと考えている.高速化のための手法としては,分枝限定法等の基本的手法をはじめとして,様々な最適化手法を用いる予定である.対象とする問題は,最大充足割当問題や最大独立点集合といった代表的な最適化問題を始めとして,ナップサック問題や数理計画問題などの実用性の高い計算困難問題を扱う予定であり,実用的な時間で高速実行可能なアルゴリズムの提案を行いたいと考えている. 2.計算シミュレータの開発:令和2年度にpythonを用いて再構築したプロトタイプシミュレータを元に,提案アルゴリズムの正当性や実効性を検証するため,計算モデルに対する高速実行可能なシミュレータの開発を行う予定である.実装については,本科研費で購入予定の計算機を用いて,膨大な入力に対しても対応可能なシミュレータの構築を行ない,シミュレーション時間の高速化を目指す.また,上記1.で提案したアルゴリズムを本シミュレータ上にて動作させ,データ構造とアルゴリズムの有効性の検証を行う.これにより,アルゴリズムの理論的な評価と実際の実行ステップ数やオブジェクト数との相関性の検証を行うとともに,提案計算モデルが妥当か否かを判断可能だと考えている.
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Research Products
(4 results)