2021 Fiscal Year Research-status Report
ドローネ三角網による平面的グラフの膨張因子とツーセンター問題の基礎研究
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20K11683
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
譚 学厚 東海大学, 情報理工学部, 教授 (50256179)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルゴリズム / 計算幾何 / 平面グラフの膨張因子 / 平面的ツーセンター問題 / 警備員巡回路問題 / Fermat-Weberセンター |
Outline of Annual Research Achievements |
平面的ツーセンター問題等に対して研究を行い、主な研究結果は下の通りである。 1.平面上に与えられた点集合を半径最小の円盤を2個用いてカバーする問題は平面的ツーセンター問題と呼ばれる。ツーセンター問題に対するO(n log n)時間のアルゴリズムが存在するかどうかは長年未解決問題である。本研究は、与えられた点集合の凸包を半径最小の円盤を2個用いてカバーするツーセンター問題を解いてから、点集合のツーセンター問題を解く手法を提案し、(n log n)時間のアルゴリズムを開発する。この研究結果に関する論文はSoDA2022に投稿する予定である。 2.1人の警備員が多角形領域Pの内部を巡回してPの監視を行うとき、Pの任意の点が巡回路上の少なくとも1点から見えるような最短の経路を求めることは警備員巡回路問題と呼ばれている。多角形の形状を予め知ることが許されない場合、今まで見てきた地理情報に基づいて多角形の内部を巡回する問題はオンライン型警備員巡回路問題とも呼ばれている。アルゴリズムの評価はオンラインで見つかった巡回路の長さと最短警備員巡回路の長さとの競合比を用いて行う。従来の最良競合比は26.5である。本研究は競合比7のアルゴリズムを開発し、従来の競合比26.5を大きく改善する。この研究結果に関する論文は学術誌TCSにオンライン(2022年5月)で掲載した。 3.Fermat-Weberセンターとはユークリッド空間における物体において、表面を含むその物体内のすべての点からの平均距離が最小となるような点のことである。本研究はこれを平面上の凸領域に関して扱い、その平均距離の下限が該当凸領域の「直径」の1/6倍に等しいか、またはそれより大きいであることを証明した。また、平均距離の上限が該当凸領域の直径の0.3444倍を超えないことも証明した。これらの結果を纏まった論文が学術論文誌に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は学術論文を3編掲載することができ、より大きな研究成果が得られた。 平面的グラフにおける2点間の最短路の長さとユークリッド距離の比率の最大値はグラフの膨張因子と言い、従来の最良因子は1.998である。本研究は、与えられた点集合が凸位置にある場合、膨張因子が1.84以下であるとの結果を既に得ており、その因子をさらに1.80に下げる研究を進んでいる。これらの研究結果を一般点集合に拡張して、従来の最良因子1.998を改善したい。 平面的ツーセンター問題については、O(n log n)時間の新しいアルゴリズムの着想を得ており、研究論文の発表を準備している。ほかのツーセンター問題への応用もできそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
平面グラフの膨張因子については、従来の最良因子1.998を改善していくことが今後の主な研究課題である。凸位置にある点集合に対する研究結果を一般点集合に拡張する方法を検討していきたい。平面的ツーセンター問題については、まずO(n log n)時間のアルゴリズムに関する研究論文を発表する。次に、この研究結果を3次元のツーセンター問題や測地学的距離(geodesic metric)で定義される多角形領域内のツーセンター問題等に拡張し、効率のよいアルゴリズムを開発する。いくつかの新しい研究成果が得られると予想している。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス蔓延のため、海外および国内の研究旅費は使えなくなり、次年度使用額が生じた主な理由である。 翌年度の助成金と合わせた使用計画は下の通りである:海外・国内旅費:77万円、論文掲載料:40万円、研究補助人件費:30万円、消耗品費:15万円、そのほか:15万円。
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