2020 Fiscal Year Research-status Report
グラフ構造に対する実用的な最適化・列挙アルゴリズムの理論設計と実装開発
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20K11691
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永持 仁 京都大学, 情報学研究科, 教授 (70202231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Shurbevski A 京都大学, 情報学研究科, 助教 (70750230)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 離散最適化 / グラフ理論 / アルゴリズム / 整数計画法 / 動的計画法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ループ付きグラフ,木状化学グラフの列挙は,グラフの同型性を考慮する点で難しい問題であるが,これらに対して分枝限定法よりも有効に働く動的計画法に基づいたアルゴリズムの設計に成功した.特に,木状化学グラフの列挙に関しては,グラフを枝構造の頻度ベクトルに置き換える新規発想に基づくもので,次に示す化学グラフの構造異性体を高速に生成するアルゴリズムの根幹を成すものとなっている. 学習済みの人工ニューラルネットワークを用いて,指定の物性値を有する化学グラフを設計する問題を混合整数線形計画問題として定式化を行い,整数計画問題を解いて得られた化学グラフの構造異性体を分枝限定法・動的計画法で列挙するアルゴリズムの設計を行った.扱える化学グラフの対象を木構造,単環構造,二環構造,一般構造と順に拡大し,設計能力の高度化を進めることができた. 生物進化の系統樹の構築に応用を持つ点対比較可能グラフ(Pairwise Comparability Graph)を特定するための方法を線形計画法の択一定理と整数計画法への定式化を利用することにより構築し,節点数が8であるPCGをすべて特定することに成功した.また,星型PCGについてはその多項式時間判定法を純粋なグラフ論的な論法で導き出すことができた. 情報可視化に応用を持つグラフ描画問題として,直線描画,上向き描画を拡張した問題ついて理論的な研究結果を得ることができ,その結果の一つとして,枝ごとの枝交差が1回までであるグラフは常に上向き描画を持つことを証明した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,オペレーションズ・リサーチ(OR)の手法である数理計画法(線形計画法・整数計画法など)とコンピュータサイエンス(CS)の離散構造列挙アルゴリズムを区別なく適用することを特徴とし,実用性を考えた研究課題に取り組むことを目標にしている.この中で化学グラフの分子構造設計の研究では,一連の研究成果を続けて発表することができている.特に,提案の新規アルゴリズムの意義が認められる形で,木構造グラフ設計の成果を発表した国際会議IEA/AIE2020では最優秀論文賞を受賞し,二環構造グラフ設計の成果を発表した学術雑誌Algorithmsでは2020年の編集委員の推薦論文に選ばれている.また,学術雑誌における発表だけでなく,分子構造設計の研究のために開発したアルゴリズムのプログラムコードはGithubでマニュアルとともに公開をし,誰もが利用できるようにしている.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,OR, SCそして機械学習の方法論を区別なく使い,化学グラフなどの有用な離散構造を生成・列挙するアルゴリズムの設計・開発を行っていく. 分子構造設計に関する課題においては,従来の順方向の解析(構造活性相関:QSAR)に対して,逆問題 (inverse QSAR)と呼ばれ古くから研究されてきているが,本研究手法のように,ORの手法を使ってこの逆問題を数学的に正確に扱われたことはない.提案の逆解析法は,あるソフトウエア会社の興味を引き,今後,共同開発の形で市販のソフトウエアとして世の中に送り出す計画が立てられている.
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Causes of Carryover |
研究成果を多くの国際会議で発表する予定であったが,新型コロナウイルスの拡大を受けて投稿予定の多くの国際会議が取りやめとなった.このために,次年度へ繰り越した. 新年度では,新型コロナウイルスの感染防止対策が進み,オンライン開催の国際会議も開催されることからこのような会議での発表に使用することを予定している.
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Research Products
(14 results)