2022 Fiscal Year Research-status Report
ムーアの法則破綻後のマイクロプロセッサの高性能化・低電力化に関する研究
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20K11732
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安藤 秀樹 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40293667)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロプロセッサ / スーパスカラ方式 / 発行キュー / ALU |
Outline of Annual Research Achievements |
現在のマイクロプロセッサは、高い性能を達成するため、命令をプログラム順ではなく、実行できる命令から順不同で実行している。この役目を果たしている中心的ハードウェアが、発行キュー(IQ: issue queue)である。これまで、商用プロッサでは,性能を向上させるためにIQのサイズを拡大してきたが、単に拡大すると遅延が増加するため、クロック速度を低下させてしまう。 また、現在のプロセッサは非常に大きな電力を消費し、チップの冷却限界に達している。このため、クロック周波数を上昇させることができず、またモバイル機器の電池を早く消耗させるという問題がある。チップ内で大きな電力を消費する回路の1つにALU(arithmetic logic unit)がある。これまで、商用プロッサでは、性能を向上させるためにALUの数を増加させてきたため、電力増加の懸念があった。 上記2点を解決するためには、従来LSI製造技術の進歩が不可欠であった。しかし、この進歩(ムーアの法則)は終わりに近づいてきた。本研究では、LSI製造技術に頼らず、IQの遅延を減少させ、ALUの電力を削減する方式を提案する。 本年度は、1)IQを構成する最も大きな回路であるエイジ論理を、機能を維持したまま大幅に縮小し、遅延と電力を削減できる方式を提案し、国際学会で成果を発表した。2) ALUの回路として、短遅延であるが高電力の従来のALUの数を半減し、長遅延であるが低電力のALUを加え、クリティカル・パスにある命令を前者で、そうでない命令を後者で実行することにより、低速ALUによる性能低下を抑えつつ電力を低減させることに成功した。クリティカル・パスにあるかどうかを、簡素な回路で判断する点が特に新しい。国内学会で成果を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究実績の概要」で述べた2つ目の成果について、国際学会発表を行う予定であるが、成果が出るのが投稿期限に間に合わなかった。 「研究実績の概要」で述べたように、発行命令がクリティカル・パスにあるかどうかを、簡素な回路で判断する点にポイントがある。この方法を見つけるまでに時間を要した。クリティカル・パスにある命令は、静的に見つけるのは容易であるが、動的に見つけることは難しい。これまで、種々の方法が提案されているが、本研究では、その目的上電力を多く消費しない方法を見つける必要がある。また、複雑な回路は、クロック速度を低下させ、電力を多く消費するので、簡単であることが必須である。そこで、プロセッサ内で同時処理中の命令(インフライト命令)の中で古い命令ほどクリティカル・パス上にある確率が高いという過去の研究の知見を利用することとした。インフライト命令の中で未発行のものはIQにあるので、IQから古さの情報を得ることは1つの方法である。しかし、IQ内では、命令は年令についてランダムに並んでいるため、古さの情報を得ることは困難である。一方、プロセッサにはリオーダ・バッファ(ROB: reorder buffer)という回路があり、年齢順に並べられたインフライト命令を保持している。これを利用することを考えた。最も単純には、発行した命令に対応するROBのエントリ番号と最も古いインフライ命令のROBのエントリ番号の差を求めればよいが、この方法は減算という演算を要し、遅延が長く、電力を消費するという欠点がある。そこで、最終的には、ROBをいくつかの部分に分割し、発行命令がインフライト命令の属する部分と同じ部分に属しているかを単純な論理積演算で同定する方法を考案した。ここに至るまでに、時間を要し計画より遅れるという結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
論文を書き、成果を国際学会で発表する。 論文を書く方策を述べる。まず、プロットを考える。研究の背景を述べ、問題を明らかにする。その後に主張を短くまとめ、読み手を引き付ける。関連研究を短く紹介し、提案方式との違いを明確にする。研究の前提となる知識をまとめ、読み手を導く。その後、提案方式を詳細に説明する。そして、提案方式の有効性を示す詳細かつ厳格な評価結果を示す。最後に、主張を短くまとめて、論文の終わりとする。この執筆において、評価結果はすでに得られているが、追加すべきデータがあれば、評価をする。論文が書けたら、英文のチェックを業者に依頼する。最後に投稿する。
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Causes of Carryover |
成果が出るのが遅れたため、国際学会投稿の〆切に間に合わなかった。次年度は、論文を書き、国際学会に投稿する。科研費は残り少ないが、出張旅費の一部に使用する。
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