2022 Fiscal Year Research-status Report
A study on sensing of road conditions and driving characteristics for improving comfortability in MaaS
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20K11793
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
白石 陽 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (90396797)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高度道路交通システム(ITS) / 公共交通 / ナビゲーション / 路面状況推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,MaaS(Mobility as a Service)における快適性向上のための,センシング技術を中心とした要素技術を開発することである. 2022年度は,快適なトータルナビゲーションを実現するための要素技術として,音響センシングを用いた歩道の路面状況推定手法の検討を行った.歩行音に着目することで,加速度に基づく従来手法よりも多様な路面状況を推定できる可能性があり,普及率の高いスマートフォンの内蔵マイクを利用することで,低コストでのデータ収集が期待できる.音響特徴量と歩行安定度を特徴量とした機械学習モデルを構築し,少人数データでの実験ではあるが,一定の精度で路面状況を推定できることを示した. また,自動車の走行の快適性向上に向けて,視界状況推定手法に関する検討を行った.車載カメラを用いた方法は,夜間や悪天候時などのロバスト性に課題があるが,視界不良時にはドライバーの視線移動が変化する可能性があるため,ドライバーの眼球運動に着目した.視線移動,注視,サッケードといった眼球運動に関する特徴量を抽出し,4種類の視界状況(昼間/夜間,晴天/雨天)の分類を行った.限定的な条件ながら,実走行データに基づく評価実験の結果,視界状況推定における眼球運動に関する特徴量の有用性を示した. さらに,ユーザの快適性(満足度)を向上させるための車両割り当て手法について,2021年度に継続して検討を進めた.前年度は,ユーザのニーズが単一の指標(利便性や経済性)で表現されるものとしていたが,利便性と経済性のバランス指標で表現されるものとして,そのバランスに応じて最適化のためのコスト関数を切り替えることで,多様なニーズを持つユーザの満足度を向上させる手法を提案した.評価実験の結果,提案手法が既存手法に比べてユーザ満足度を向上させること,特に経済性重視のユーザの満足度を向上させることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は,快適性に関する道路状況センシング技術について新たな観点で検討を進めた.前年度までに検討した足圧に基づく歩道の路面状況推定手法は,冬季の積雪路面や凍結路面を一定の精度で分類することができたが,参加型センシングによるデータ収集を想定した場合,導入コストが課題となる.その問題への対策として,普及率の高いスマートフォンの内蔵マイクを用いた路面状況推定手法の検討を進めた.複数人の歩行音データを用いた実験の結果,音響特徴量 MFCC (Mel Frequency Cepstral Coefficients) と歩行安定度を組み合わせて用いることで, 3種類の路面状況(舗装路/乾燥,舗装路/湿潤,草地/乾燥)について,F値7割程度の精度で分類できることを示した. 視界状況推定手法については,2022年度は,初期的検討としてシンプルな4クラス分類(昼間/夜間,晴天/雨天)を対象として,特徴量の選定と評価実験を行った.眼鏡型の視線計測デバイスを用いて視線移動,注視,サッケードに関するデータを収集・分析し,それぞれの特徴量を抽出し,特徴量の組み合わせごとの分類精度を調査した.その結果,視線移動に関する特徴量を用いた場合の精度が高く,注視やサッケードに関する特徴量を追加することで,より高精度に分類できることを示した. ライドシェアサービスのための車両配車手法について,多様なニーズを持つユーザからのデマンドに対応するために前年度に提案した手法の拡張を行った.拡張した手法では,ユーザのニーズ(利便性と経済性)のバランスを重みとして与え,その重みに基づいて3種類のコスト関数(利便性,経済性,バランス型)を切り替えて利用する.ユーザ満足度評価式を定義し,グリッド状のマップを用いたシミュレーション実験において,ユーザ満足度の観点から評価を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は,MaaSにおける快適性向上のためのモバイルセンシング技術として,これまでの提案手法の汎用性に関する検証および改良を進め,多角的な観点での検討を行う. モバイルセンシングによる用いた道路状況センシング技術としては,スマートフォンを用いた音響センシングによる歩道路面状況推定手法について,汎用性・ロバスト性の向上のための検討を進める.より多人数のデータを用いて,より多様な路面状況を対象としたデータ収集を行いて評価実験を行い,特徴量の再検討,データ分割方法,環境音などのノイズ対策などを含めて,提案手法の改良を進める. 眼球運動に基づく視界状況推定手法については,眼鏡型デバイスを用いた場合,収集データがデバイス座標系に依存しているため,ドライバーの視線移動を適切に抽出できているとは限らない.そこでドライバーの頭部運動データも特徴量として考慮し,分析・検討を行う.また,視線移動や注視などの眼球運動は,通常の運転行動においても特徴的な傾向を示すと考えられるため,視界変化時の動きとは区別して処理する必要がある.ドライバーによる個人差もあると考えられるため,より多くの被験者データを収集し,分析を行うことで,より実用的な手法の確立を目指す.
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Causes of Carryover |
2022年度は,2021年度に比べると多くの研究発表会がハイブリッドで開催されるようになったが,一部の研究発表会ではオンライン参加だけのものもあり,そのための旅費支出が不要となった.また,複数の被験者の協力を得てデータ収集を行う実験においては,新型コロナウイルス感染対策などの面で若干の制約を受け,当初計画していた通りに実験を実施することができず,そのための実験謝金・実験機材の拡充のための費用が不要となった. 2023年度の主な予算の使途としては,論文掲載料,研究成果発表のための旅費・参加費,実験協力者への謝金などが挙げられる.
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Research Products
(4 results)