2022 Fiscal Year Research-status Report
Advanced biometric authentication system for mobile devices
Project/Area Number |
20K11814
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
山崎 恭 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (10318785)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生体認証 / 携帯端末 / 暗号・認証等 / 画像、文章、音声等認識 / 継続認証 / コンテキストアウェアネス / マルチファクタ認証 / テンプレート保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,スマートフォンやタブレットPCなどの携帯端末において,従来と比較してより安全性と利便性を向上させた新たな生体認証システム(高度生体認証システム)を開発することを目的とする.本研究では,認証を目的としないユーザの日常的な動作から抽出した生体情報を利用してユーザに負担を与えることなく継続的な認証を行うことが可能であり,また,利用環境の変化に対する高い頑健性と生体情報の適切な保護機能を具備する生体認証システムの実現を目指している.
令和4年度の主要な研究実績は,1.携帯端末に適した新たな生体認証アルゴリズムの開発と評価,2.実際の利用環境を想定した携帯端末上での生体認証システムの開発と評価の二点である.1.については,前年度に引き続き,A)継続認証,B)利用環境の変化に対する頑健性,C)マルチモーダル認証の三条件を満足する生体認証アルゴリズムの開発と評価を行った.具体的には,スマートフォンから取得可能な生体情報として,ユーザの顔画像およびタッチスクリーン操作に着目し,ユーザの利用環境を認識して当該環境に適した生体情報を適応的に選択する継続認証アルゴリズムを開発するとともに,シミュレーション実験によりその有効性を明らかにした.また,2.については,1.で開発した継続認証アルゴリズムを携帯端末に実装する際の課題を抽出するとともに,部分的に実機を使用し,実際の利用環境に近い状況下でシミュレーション実験を行い,提案する生体認証システムの有効性を明らかにした.これらの研究成果は,いずれも本研究が目指す高度生体認証システムの実現に資する成果と位置付けられる.
なお,当該年度は,学術雑誌への論文投稿(掲載),国際会議での講演,および国内の主要な研究会やシンポジウムでの講演により研究成果を発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は,1.携帯端末に適した新たな生体認証アルゴリズムの開発と評価,2.携帯端末に適した新たなテンプレート保護技術の開発と評価の二点を主要な検討項目に設定した.1.については,前年度に引き続き,ユーザの利用環境を認識して当該環境に適した生体情報を適応的に選択する継続認証アルゴリズムを開発するとともに,シミュレーション実験によりその有効性を明らかにした.一方,当該アルゴリズムを携帯端末に実装することを考慮した場合,携帯端末におけるリソースの制約に纏わる問題やテンプレートの登録・更新に伴うユーザの利便性低下の問題を解決する必要があり,これらは本研究が目指す高度生体認証システムの実現に少なからぬ影響を及ぼす可能性がある.そこで,令和4年度は当初の計画である2.の検討に先行してこの問題への対応を検討した.具体的には,認証精度と携帯端末のリソース消費量のバランスを考慮してモダリティを選択し,認証システムが自動でテンプレートの登録・更新を行う新たな継続認証手法を提案し,部分的に実機を使用したシミュレーション実験によりその有効性を明らかにした.これらの研究成果は,学術雑誌への論文投稿(掲載),国際会議での講演,および国内の主要な研究会やシンポジウムでの講演という形で発表された.
一方,研究開始年度から2年間にわたり実施する計画であった生体情報データベースの整備・拡充については,令和4年度も新型コロナウイルス感染症の影響により実施できなかった.本件については,今後も継続的に取り組む計画であるが,既存の生体情報の効果的な利用方法についても検討する予定である.
以上の点から,生体情報データベースの整備については計画を下回っているが,その他は多少の計画変更はあったもののほぼ当初の計画に沿った形で実施できていることから,研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる令和5年度は,これまでに開発した携帯端末に適した生体認証アルゴリズムやテンプレート保護技術を統合した新たな高度生体認証システムを構築し,当該システムを携帯端末に実装して実際の利用環境に近い状況下でその性能を評価することを主要な検討項目に設定する.具体的には,脅威の存在を想定した提案システムの安全性を定量的な指標に基づき評価するとともに,認証アプリケーションとしての使い易さをはじめとした提案手法の利便性を主観的な指標に基づき評価する.
なお,課題として残されている生体情報データベースの整備・拡充については,今後も継続的に取り組むとともに,既存の生体情報の効果的な利用方法についても検討を継続する.
また,最終年度であることを踏まえ,研究実施期間内に得られた全ての研究成果をとりまとめ,内外で開催される研究会およびシンポジウムにて発表するとともに,関連分野の学術雑誌に論文として投稿する計画である.
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の計画では,令和2年度から令和3年度にかけて生体情報データベースを整備する計画であったが,前述のように新型コロナウイルス感染症の影響により,令和3年度に引き続き令和4年度も被験者の立ち会いを必要とする大規模な生体情報の収集作業は計画通りに実施できなかった.そのため,データベースの整備に使用を予定していた人件費・謝金が未使用となった.また,同じく新型コロナウイルス感染症の影響により,内外の研究会やシンポジウム,国際会議等の一部がオンラインまたはハイブリッドでの開催となり,これらに現地で参加して研究成果発表を行うために使用を予定していた旅費が未使用となった.以上の理由により,次年度使用額が生じる結果となった. (使用計画) 次年度使用額については,当該年度以降分として請求した助成金と合わせて,引き続き生体情報データベースの整備・拡充,および研究成果発表費用に使用する計画である.
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