2020 Fiscal Year Research-status Report
格子基底簡約アルゴリズムの改良とRSA暗号安全性解析への応用
Project/Area Number |
20K11816
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
深瀬 道晴 東北学院大学, 工学部, 講師 (30626502)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 格子基底簡約アルゴリズム / 進化的計算手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、公開鍵暗号の主流として、RSA暗号や楕円曲線暗号が広く使用されている。量子計算機が実現した場合に、RSA暗号や楕円曲線暗号が破られてしまうことが示されており、量子計算機環境においても破られない暗号、すなわち、耐量子計算機暗号の実現が重要である。格子暗号は、耐量子計算機暗号の候補の一つである。格子暗号を実用化させる上では、格子暗号の安全性評価が不可欠である。そして、格子暗号の安全性評価において必要となる道具が、格子基底簡約アルゴリズムである。正確な安全性評価のためには、格子基底簡約アルゴリズムの高速化を追求することが重要である。格子基底簡約アルゴリズムにおいては、格子の短いベクトルを多数発生させる必要がある。特に、非常に短いベクトルを発生させることは、基底簡約のプロセスを促進させる上で非常に効果的である。 当該年度においては、従来研究では着目されてこなかった観点から、非常に短いベクトルの性質を調べた。ここで発見した性質に基づいて、新しい種類の基底簡約アルゴリズムを構築しうることを、実験的に確かめた。具体的には、2次元の格子においては、新しい方法で非常に短いベクトルを発生できることを実験的に確かめた。2次元よりも高い次元においては、新しい方法で非常に短いベクトルを発生させる所までは到達しなかったが、現状の課題点を明らかにした上で、高い次元における新しいアルゴリズムの概要を明らかにした。 また、非常に短いベクトルを求めるために、進化的計算手法を用いる研究結果がいくつか既に発表されているが、本研究において、これらの研究におけるアルゴリズムを実装し、それらのアルゴリズムを改良する準備的実験を行った。 これらの成果は、格子基底簡約アルゴリズムの高速化の可能性を示すものであり、意義があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究成果として、従来研究では着目されてこなかった観点から、非常に短いベクトルの性質を調べて、新しいアルゴリズム構築の可能性を実験的に検証したことが挙げられるが、この成果に関しては、2020年10月に論文として投稿した。当該論文は、2021年1月に不採録通知を受けたが、査読者のコメントに従って、その内容を大幅に改善し、2021年4月または5月には再投稿の目処が立っている。論文採録には至っていないが、研究成果が論文の形でまとめられつつあるため、順調であると考えられる。 また、進化的計算手法によって格子の非常に短いベクトルを求める方法については、既存研究の方法を実装し、詳細な実験を実施したことで、既存研究のアルゴリズムを改良するためのアイデアが既にまとまっており、計算機実験も既に実施している。このため、ここでも、研究成果を論文の形でまとめる目処が既に立っており、2021年5月以降、可能な段階で論文投稿をする予定である。 以上より、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況において述べたように、現在までに、研究成果として、2本の論文としてまとめられつつある。1本については、既に投稿し、また、既に不採録通知を受けたが、まずは、この1本の採録を目指す。2本目についても、最初の1本が不採録になった理由も踏まえて、入念に準備をした上で、採録を目指す。 上の1本目の論文が不採録になった理由の一つとして、計算機実験の不十分さが挙げられる。当該年度の研究においては、計算機環境の構築も同時に行ってきたが、現在までに、計算機環境を概ね構築することができた。しかし、十分な計算機実験を実施するためには、限られた計算資源を効率的に使用する必要があり、そのためには、綿密な実験計画の策定が必要である。今後の研究を推進する上では、ここで挙げた綿密な実験計画の策定が重要である。 また、当該年度の研究成果をより発展させるために、綿密な実験計画と共に、理論的分析の進展も必要不可欠である。
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Causes of Carryover |
当該年度における研究が進捗する過程で、実験システムの規模を正確に見極める必要があったため、当該年度において実験システム構築の完成を見送ったことが最大の理由である。また、新型コロナウィルス感染拡大の社会的要因によって、当該年度において、学会及び研究会参加費が発生しなかったことも理由として挙げられる。
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