2020 Fiscal Year Research-status Report
位置ベース法によるマルチフィジクスシミュレーション
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20K11839
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤澤 誠 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (90508409)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 位置ベース法 / コンピュータグラフィックス / 物理シミュレーション / 粒子法 / マルチフィジクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではリアルタイムシミュレーション手法である位置ベース法に注目し,力ではなく位置に基づく定式化によって,既存の技術では膨大な計算時間と膨大なパラメータ調整が必要となる多数の現象が影響し合うような,現実世界の複雑な自然現象のコンピュータシミュレーションを可能とすることを目的としている. 本年度は位置ベース法を拡張し,熱などの他の物理量に対応したシミュレータを開発した.具体的には,粒子法を用いた位置ベースの流体シミュレータを開発し,それに陰解法を用いた温度計算を導入することで,炎のシミュレーション手法を開発した.炎のシミュレーションでは位置ベース法の安定性及び制御性の良さを生かして,熱伝導係数などの物理パラメータではなく,炎の高さや広がりといった視覚的な特徴に基づくパラメータ設定を可能とし,実験によりその有用性を確かめた.また,位置ベースの個別要素法(DEM)と位置ベース流体を組み合わせることで融解も考慮した雪のシミュレーション手法や位置ベース法による毛髪シミュレーションと液体シミュレーションの組み合わせによる毛髪と水のインタラクション手法,液体と土砂シミュレータの組み合わせによる土砂構造物の崩壊シミュレーション手法も開発した.本年度の研究成果についてはまだ未発表ではあるが,今回の炎シミュレーションのベースとなったこれまでに開発していた燃焼過程を考慮した粒子法による炎シミュレーション手法が画像電子学会誌に採録され,その他位置ベース法による地形生成や土砂流れのシミュレーションについて国内会議で発表している.また,毛髪と水のインタラクション手法,土砂構造物の崩壊シミュレーション手法については査読付き国際会議に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基礎となる位置ベース法による流体や固体のシミュレータについての開発は順調に進んでおり,熱拡散を含めた位置ベース法による炎のシミュレーション,位置ベース個別要素法(DEM)と位置ベース流体法によるメッシュレスでの土砂構造物や雪のシミュレーション,位置ベースでの毛髪シミュレーションと液体シミュレーションの組み合わせによる両者のインタラクション手法などを開発してきた.炎シミュレーションでは陰解法による熱計算を組み合わせることで安定したシミュレーションを可能とした.DEMと流体の組み合わせでは位置ベース法を用いることである程度安定かつ高速に計算可能であることが確かめられた.また,毛髪と液体のインタラクションについては,毛髪内部の化学結合を考慮することで従来の弾性体を対象としたシミュレーション手法を拡張した,液体の影響による塑性変形まで考慮した位置ベースの毛髪シミュレーション手法を新たに開発することが出来た.これらのシミュレーションの結果を実際にコンピュータグラフィックスアニメーションとして可視化し,それぞれ視覚的に問題ない結果が得られていることも確認している.このように現在までのところ現実世界の複雑な自然現象のコンピュータシミュレーションを可能とするという目標を順調に達成しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度までで位置ベース法により様々な現象をシミュレーションするための方法を開発したが,それを更に拡張し,より現実世界の現象に近づけていくというのが今後の研究方策の一つである.例えば,毛髪シミュレーションでは毛髪内部への液体の吸収・拡散は考慮したが,液体の表面張力による影響や風・熱による液体の蒸発による毛髪塑性変形への影響はまだ考慮できていない.土砂構造物の崩壊シミュレーションは粒子法で土砂の挙動を再現したが,同一粒径の粒子のみしか考慮しておらず,実際の土砂構造物(フィルダムなど)で見られる,異なる粒径を持つ土砂の組み合わせについては考慮できていない.このような未だ考慮できていないことを再現するための方法やさらに様々な現象を再現するためのシミュレーション手法を開発し,より現実世界の現象に近づけていきたい.また,現実世界の現象とどのくらい近いのかの検証は現在のところコンピュータグラフィックスアニメーションとして可視化することによる主観的な評価しか出来ておらず,実際の現象を撮影したものとの比較や専門家に見てもらってのインタビュー調査などより客観的な評価を行っていくことも今後の研究の推進方策となる.
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Causes of Carryover |
旅費として想定していた国内シンポジウム,国際会議がすべてオンライン開催となったため,学会参加費のみで旅費が必要なくなったため,次年度の旅費として繰り越す.
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