2021 Fiscal Year Research-status Report
Computer simulation of double-negative acoustic metamaterial composites
Project/Area Number |
20K11848
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
寺尾 貴道 岐阜大学, 工学部, 教授 (40271647)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | メタマテリアル / 大規模シミュレーション / 弾性波 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界における通常の弾性体材料において、質量密度と弾性率という2種類の物性値は共に正の値を有する。音響メタマテリアルとは、その少なくともどちらか片方が負の値を示すような人工材料の総称であり、その特異な物理的性質に関する研究が行われてきた。上記2種類の物性値のうち、どちらか一方だけが負の場合はシングル・ネガティブ・メタマテリアル(SN)、両者が共に負の場合はダブル・ネガティブ・メタマテリアル(DN)と呼ばれる。本研究課題においては、通常の弾性体と音響メタマテリアルの組み合わせからなる複合材料に関する研究を行っている。SN音響メタマテリアルにおいては、特定の周波数付近における振動励起が強く吸収される傾向にある事などが明らかにされている。それに対して、DN系を採用した音響メタマテリアル複合材料における弾性波の伝搬特性に関しては、未知の点が数多い。 令和3年度ではこの問題に関して、DN音響メタマテリアルを用いたランダム多層膜における振動特性について数値的に明らかにした。一般にランダム系における波動の物理的性質については、波の局在現象をはじめとして多くの研究が行われてきた。しかし、音響メタマテリアルが関与するランダム系材料の性質に関しては未だ十分な研究が行われていなかった。現実のメタマテリアル材料においては、ランダムネスの影響が無視できない事例もあり、この様な問題について明らかにする事は実用上も興味深い。今年度の研究においては、主にDN音響メタマテリアルを含むランダム系材料における弾性波伝播特性について、定量的に明らかにした。また、この様な系において観測される局在長の特異な振る舞いに関して、その物理的起源についての考察を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況は、下記の通りである。ランダム・メタマテリアルにおける波動の性質に関して、具体的に以下の問題について明らかにした。(1) ランダム音響メタマテリアル多層膜という新たな材料における、弾性波の固有モード解析を行った。具体的にはparticipation number に関する解析を行い、弾性波の局在特性及びその振動数依存性について明らかにした。その結果、ランダムDN音響メタマテリアル複合材料に特有な波の局在特性、およびその物理的起源について明らかにした。また関連する問題として、電磁メタマテリアルを用いたランダム多層膜における、電磁波の物理的性質との比較についても議論を行った。(2) メタマテリアルと通常の媒質をランダムに組み合わせて、要求された波の透過特性を実現出来るような構造を設計する最適化問題は、逆問題として定式化される。本研究では、上記の最適化問題を解く独自の解析手法(restart tempering method)の開発を行い、その有効性に関して示した。(3)上記の得られた結果に関して、2021年度に開催されたメタマテリアル国際会議(オンライン)における発表を行った。これらの結果の一部は、本国際会議におけるプロシーディングス(査読付)として公表済である。またその他の結果に関しても、EPJ Appl. Metamaterials誌に掲載された。上記の結果から、本研究課題における進捗状況については、順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、以下の通りである。次年度の研究においては、ランダム音響メタマテリアル複合材料に適した、新たな大規模計算手法の開発を行う。一般にランダム・メタマテリアル系における研究においては、膨大な計算時間が必要となる事例が数多い。この傾向は、高次元系、あるいは形状が複雑な系の問題において、より顕著となる。本研究では独自の計算手法を導入する事により、従来の計算手法ではアプローチが困難である未解決の諸問題について、数値的研究を行う。現実の材料においてダブルネガティブ音響メタマテリアルを実現する方法については、近年複数の新たな手法が提案されている。独自に開発した計算手法をこれらの問題に適用する事により、音響メタマテリアル複合材料の設計問題への展開を行う。 また関連する問題として、音響メタサーフェス複合材料に関する研究を行う。具体的には音響メタサーフェスにおける弾性表面波の問題について、その物理的性質の解明を行う。また、ランダム系音響メタサーフェスに関する数値的研究を行う。一連の研究課題に関連して、音響メタサーフェスの解析に適した新たな計算手法の開発を行う。
|