2020 Fiscal Year Research-status Report
高精度かつ高速な呼吸系気流シミュレーション手法の開発
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20K11852
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
陳 献 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (70313012)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 綱彦 山口大学, 医学部附属病院, 准教授 (00382333)
Jiang Fei 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (60734358)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 呼吸シミュレーション / 生体力学 / 流体構造連成解析 / 有限要素法 / 格子ボルツマン法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である高精度かつ高速な呼吸系気流シミュレーション手法の開発に向けて、まず令和2年度では呼吸における肺の変形に伴う気管支気流の流体構造連成解析手法の開発を行った。肺・気管支変形解析は有限要素法により行い、気流解析は微圧縮性流体解析の効率的な方法である格子ボルツマン法により行う。有限要素法による変形解析と格子ボルツマン法による流れ解析は、埋め込み境界法とサブ反復スキームを介して結合される。また、計算精度を向上させるため仮想構造法を開発した。渦によって引き起こされる振動問題を用いて、開発した連成解析手法に対する検証を行った。解析結果を従来研究と比較し、良い一致が得られた。開発した手法は大規模連立方程式を解く必要はなく、並列計算に適しているため、高い計算効率が得られた。一方、気管支気流解析における気管支モデルの構築では、CTデータからの気管支形状を抽出する作業は必要であるが、複雑な気管支システムの構造と領域識別の難しさより、気管支モデルの構築は困難な作業となっている。そこで、本研究では、トポロジー解析を用いた気道出口の自動検出アルゴリズムを提案し、効率的気管支システムのボクセルメッシュの構築手法を開発した。これらの成果により、気管支内の気流解析の高速化を実現し、リアルタイムかつ患者別に対応した診断および治療への適用が可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
R2年度の研究では、有限要素法による変形解析と格子ボルツマン法による気流解析を連成した構造流体連成解析手法を開発し、数値解析例により開発した手法の有効性を検証した。また、トポロジー解析を用いた気道出口の自動検出アルゴリズムを提案し、効率的気管支システムのボクセルメッシュの構築手法を開発した。これらにより、呼吸における肺の変形に伴う気管支内気流解析の基盤を構築し、本年度の目標はほぼ達成できた。一方、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、R2年度では大学の教育形態が大きく変わり、研究代表者は学科の教務担当として、これらの対応に多くの時間を費やした。またこれまでになかった遠隔講義の準備にも時間が取られた。このため、本来予定していた、開発した手法のワークステーションへの実装までは到達できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度では、GPU並列計算ワークステーションを導入し、GPGPUを用いた高速並列計算アルゴリズムを開発することにより、ワークステーションに実装する高速気管支流体構造連成解析を実現させる。さらに、肺内微小気流のモデル化を行い、微小気流解析手法の開発を行うとともに、CT画像を基に肺と気管支を含む呼吸系シミュレーションモデルを構築し、申請書に記載した研究計画の通り研究開発を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、教育の負担が重くなり、開発した肺変形・気管支気流連成解析手法のワークステーションへの実装が遅れることにより、予定していたワークステーションの導入が遅れ、次年度使用額が生じた一つの原因となる。R3年度ではGPU並列計算ワークステーションを導入し、GPGPUを用いた高速並列計算アルゴリズムを開発することにより、ワークステーションに実装する高速気管支流体構造連成解析を実現させる。 また、新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、予定していた国際会議や国内学会に参加することができなくなり、これらの旅費が次年度使用額が生じたもう一つの原因となる。R3年度では積極的に国際会議及び国内学会に参加し、情報交換や成果発表を行う予定である。
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