2020 Fiscal Year Research-status Report
並列ペリダイナミクスによる大規模接触破壊シミュレーションの実現
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20K11857
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
椎原 良典 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90466855)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペリダイナミクス / 接触 / 破壊 |
Outline of Annual Research Achievements |
衝突にさらされる機械構造物の強度設計には,接触がもたらす破壊現象への理解が不可欠である.しかしながら,接触破壊問題のシミュレーションは接触と破壊という複雑な現象のモデル化を要することから,既存の手法によって容易に扱えない未開拓問題として残されている.ペリダイナミクス(Peridynamics, PD)は破壊現象を精度よく模擬できる粒子法の一種であるが,接触破壊問題への応用は多くない.本研究では,接触問題における精度と莫大な計算量という2つの問題に着目し,定式の改良と超並列計算化を通じて接触破壊問題におけるPDの欠点を克服することを目的とする.これにより,極めて動的な大規模接触破壊シミュレーションを高精度に解くことが可能となる.本研究では特に,任意の材料を扱うことができるNon-Ordinary State-based PDを対象として研究を進めている.本年度は,(1) 重み関数のNOSB-PDへの導入,(2) NOSB-PDによる衝突破壊,の研究項目2点について研究を実施した.以下に詳細を示す. 研究項目(1)について,重み関数はPDにより柔軟な粒子配置を許し接触問題における精度を大幅に改善する本研究グループ独自のアイデアであるが,破壊基準である粒子間結合エネルギーの計算に大きな誤差があった.この誤差の要因を詳細に解析し,調整パラメータを定式に導入することで,この問題を解決した. 研究項目(2)においては,本研究課題のテーマである接触による破壊現象,具体的には,平板への円筒の衝突破壊問題に取り組んだ.(1)の工夫に併せて,破壊基準の検討,数値安定化法の導入を行うことで,衝突破壊シミュレーションを実現した.NOSB-PDに関する先行研究は多いものの,接触による破壊現象を再現した計算はほとんどない.本研究はNOSB-PDの適用性を大きく拡張するものであり,その意義は大きい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したとおり,NOSB-PD定式による接触破壊シミュレーションの実現はPD研究において大きな一歩であり,その意味で当初計画以上に進展していると言える.一方で,本研究課題のもう一つのテーマは並列計算である.引張変形等の接触が起きない問題ではOrthogonal Recursive Bisection法による並列計算を実現しているが,まだ接触計算の大規模並列化は実現できていない.この理由は,接触破壊の実現にリソースを割いたためである.次年度計画においてこの問題を解決する.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,ORB法による接触破壊問題の大規模並列シミュレーションの実現に取り組む.接触判定に網羅的探索・バックグラウンドセルを用いた探索を実装し,両者の効率を比較する.また,構築したORB法について並列チューニングを実施する.最終年度の研究計画である積層板の衝撃破壊シミュレーションを実現するための準備として,並列計算による大規模化を実現する.
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