2020 Fiscal Year Research-status Report
深層学習と統計モデリングの融合による自然現象予報のための画像変換方法の検討
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20K11863
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
八谷 大岳 和歌山大学, システム工学部, 講師 (00578908)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ディープラーニング / 統計モデリング / 点過程 / 画像変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最初のステップとして、2021年度前半までに、ディープニューラルネットワーク(以下、DNN)の画像変換技術と、自然科学にて研究が進んでいる統計モデルとを融合し、過去の地震などの事象マップ画像から未来の事象を予測する方法を検討する計画である。 本年度は、本計画に従い、以下の検討を行い、その成果を、11月にIBISワークショップにて発表するとともに、3月に、査読ありの国際・国内会議に論文を2本投稿した。 地震などの不規則に発生するイベントの統計モデルとして、点過程が知られている。点過程は、余震のように、直近のイベントの発生時刻や場所から減衰関数を用いて、次のイベントの起こりやすさを表す強度関数をモデル化する。強度関数には、地震の知見に基づき指数分布関数などが用いられてきた。近年、LSTM(Long Short-Term Memory)とDNNとを用いて自由度の高い累積強度関数をモデル化するDNNベースの方式が提案された(T. Omi et al., NeurIPS2019)。しかし、当該方式は、次のイベントまでの時間間隔の予測には応用されたものの、過去の地震の位置や深さなどの付加的な情報を活用することができていなかった。また、付加的な情報を点過程で用いるためには、ETAS(Y. Ogata 1998)のように、知見に基づきモデルを設計する必要があった。 当該課題を解決するために、本研究では、地震の付加的な情報を視認可能な状態で画像に埋め込み、画像からオートエンコーダを介して抽出した特徴量を時間間隔と組み合わせてDNNに入力し、時間と付加情報とに関する強度関数を推定する面的点過程方式を新たに提案した。そして、トイデータ、および地震の公開データを用いた実験を通して、本提案手法の有効性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナの影響により、研究代表者が大学にて担当している本年度の全ての授業(5教科)が、対面からオンラインへと切り替わった。そのため、研究代表者は、当初、日程的に予定していなかった、オンライン授業の教材(ナレーション付きパワーポイントおよび動画)の作成に、全体で3カ月以上の時間を費やすことになった。また、本研究は、謝金を利用し、実験等において、研究代表者の研究室の学生の協力を受けながら進める予定だったが、本年度の数カ月間、学生は大学への登学が規制された。そのため、学生からの十分な協力を受けるのが困難であり、かつ、学生が遠隔から大学のワークステーションに接続し作業ができるようにするための環境整備に多くの時間を要した。 以上の理由により、本年度は、予定より進捗の遅れが発生した。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、時系列データから特徴量を抽出する新方式として、Transformer(A. Vaswani et al., NeurIPS2017)が躍進してきた。Transformerは、文章内の2つの単語間の相関を考慮することにより、文章の翻訳にてLSTMを凌駕する性能と計算コストの削減を示した。そして、部分画像間の相関を考慮することにより画像認識においても高い性能を示すことがわかった。このTransformerなどの先端の機械学習方式を点過程に応用する取り組みが発表され始めている(J. Enguehard et al., arXiv2020、R. T. Q. Chen et al., ICLR2021)。 本研究の当初の計画では、ステップ2として、2021年度後半から、より実践的な統計モデリングとして、地形、断層、人口密度などの自然科学の空間的な知見や過去の事象マップ画像から獲得した空間的な相関関係に基づき、ステップ1にて提案した方式の拡張を行う予定であったが、前述したように遅れが発生していることと、Transformerの応用が加速していることを踏まえて、2021年度は、ステップ1にて提案した面的点過程方式にTransformerを導入し拡張することに集中する。具体的には、DNNベースの点過程では、強度関数の非負性を満たすために、DNNのパラメータに制約を入れていて、自由度が低減するという課題があった。しかし、データ間の内積演算を繰り返すTransformerでは、出力の符号は入力に依存するため、パラメータに対する制約は有効ではない。当該課題を解決することにより、当初のステップ2の時空間な相関関係に基づいた新しい点過程方式を提案する。そして、トイデータおよび公開データを用いた、DNNの点過程方式(ステップ1)および既存の最先端方式との比較実験を通し、提案法の有効性を示す。
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Causes of Carryover |
本年度は、国内および国際会議への出張を想定し旅費を計上していたが、新型コロナの影響により全ての会議がオンラインで実施されることになり次年度使用額が生じた。次年度では、国内会議および国際会議への出張と学会参加費および論文誌の掲載料としての使用を予定している。しかし、学会が引き続きオンラインで実施される場合は、オンラインの学会発表に用いるノートパソコンの購入に使用する。
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Research Products
(1 results)