2021 Fiscal Year Research-status Report
高齢者への音声による効果的な情報伝達のための韻律制御モデルの構築と評価
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20K11869
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Research Institution | Suwa University of Science |
Principal Investigator |
水野 秀之 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 教授 (30833892)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 秀治 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, 研究主任 (90832684)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高齢者向け発話データの整備 / 韻律分析 / 言語的モデルの構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は高齢者応対経験や資格を有する話者が高齢者を意識して発話した音声と特に高齢者を意識せず発話した読み上げ音声の韻律的特徴の差異について検討してきた. 2020年度は、話者としては高齢者から最も発話が聞き取りやすいと評価された女性1名を選定し,聞き手として高齢者を意識して発話した音声と通常の読み上げ音声を収集した.発話文としては市町村の広報文に類似した文書を用意した.また当該話者に文書を事前に提示し重要と思われる箇所(重要箇所)にラベルを付与させた.重要箇所に着目した理由は,言語的情報が同じであっても,読み上げ音声と比べて音声に違いが認められる場合,例えば強調がある場合その強調のラベルを導入することにより,音声を十分に加工・合成可能であることがこれまでの研究で明らかにされているためである.高齢者向けの音声においても,前記の重要箇所における特徴が異なるようであれば,重要箇所を示すラベルを添えることで音声の差異を十分に表現・加工できることが期待できる. 2021年度は,昨年度収集した音声に対し呼気段落区間とアクセント句境界のラベリングを行った後,基本周波数,話速,パワーの分析を行いデータの整備を行った.その後2種類の音声の韻律の比較分析と発話文における重要箇所の言語的モデルの検討を行った.韻律の比較分析については,高齢者向け発話に関し以下の点が確認できた.1)基本周波数の平均値の上昇.2)アクセント句内での基本周波数レンジの拡大.3)話速の若干の上昇.4)重要箇所におけるアクセント句内の基本周波数の最大値の上昇.重要箇所を予測する言語的モデルについては,言語情報と機械学習の1つである深層学習とを用いて予測する方式の検討を行なった.重要箇所と非重要箇所のどちらも正確に特定されることが必要であるため,精度を尺度として評価を行ない,高い精度(8割以上)が得られることを確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度,covid-19による社会活動への多大な影響に伴って音声データの収集が大幅に遅延したことにより,本来2020年度内に実施する予定であったラベリング作業及び韻律特徴抽出を行うことができなかっため,2021年度前半はまずそれらの作業を行いデータの整備を完了させた.年度後半に整備したラベルデータを用いて韻律的特徴に関する詳細な統計的分析を行い,学会にてその成果の報告を行うことはできたが,韻律的特徴の予測モデルの構築までには至っていない.言語的モデルについては,ほぼ予定通りの進捗である.
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Strategy for Future Research Activity |
本来であれば,2021年度中には2020年度内に確立した韻律的特徴の予測モデルの構築を行い学会にて報告を行う予定であったが,【現在までの進捗状況】で示した通り,予測モデルの構築まで行うことができなかった.言語的モデルについてはほぼ予定通りの進捗で,一定程度の精度が得られるモデル構築を行なうことができた. そのため韻律的特徴の予測モデルについては2022年度の前半内に可能な限り早急に進め学会にて報告する予定である.言語的モデルについては2021年度の進捗である重要箇所予測モデルについて2022年度前半の学会で報告する.これまでのところは記号的な意味での重要箇所を予測対象とした.読み上げ音声と比べて音声的に十分な差異が認められる箇所に前記の重要箇所を絞り込まれた場合は,それを対象とした検討も行なう. また年度後半ではそれらの構築した予測モデルを用いて音声を作成し高齢者による主観評価を行い学会に報告する予定である.
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Causes of Carryover |
covid-19による移動制限・イベント自粛により、当初対面で予定していた共同研究者との打ち合わせ及び学会参加が全てオンラインとなり当初出張経費として予定していた旅費が不要となったことから,当該費用を次年度に繰り越しすることとしたため.
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Research Products
(1 results)