2020 Fiscal Year Research-status Report
サル低次視覚野神経細胞の高次元機能モデルと微小神経回路
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20K11885
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐々木 耕太 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (40467501)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 受容野 / 刺激選択性 / 機能モデル / 微小神経回路 / 機能的結合 / データ駆動 / データマイニング / 次元の呪い |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはつねひごろ豊かな感覚体験を享受している。これは、どのような神経回路によって実現されているのだろうか?その一端を明らかにするため、大脳皮質感覚領野のモデル系であるマカク属サル大脳皮質の1次視覚野、および4次視覚野を例とし、多数の神経細胞の活動を多点電極により同時に記録し、それぞれの細胞が担う機能を調べた。 1次視覚野の神経細胞は方位に選択的に応答することで有名であるが、視覚神経細胞の応答を特徴づけるには方位の他にも空間周波数などの他の視覚特徴次元も必要である。そこで、それぞれの細胞が担う機能を明らかにするために、高次元の視覚特徴をパラメータとする視覚刺激を呈示し、それに対するスパイク応答を記録した。記録した応答は逆相関法というシステム同定の手法を使って解析し、それぞれの細胞が高次元空間においてどのような視覚特徴の組み合わせを選択的に符号化しているのか検討した。 さらに、どの神経細胞とどの神経細胞の間に接続があって神経回路を形成しているのか明らかにするために、同時に記録できた神経細胞のすべてのペアについてスパイク列の相互相関関数を求めた。 これまでに、方位に対する選択性が似ている神経細胞同士は、似ていないもの同士よりも接続される傾向にあることが報告されている。この研究課題が目指すように、視覚神経細胞の応答特性を方位以外の次元にも拡張して計測し、どのような視覚特徴次元が神経回路の形成に関与しているのか明らかにすることは、階層的な視覚皮質の構成原理を解明する上で避けられない課題であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
麻酔・不動化したマカク属サルにおいて、大脳皮質1次視覚野および4次視覚野からNeuroNexus製のシリコンプローブ電極を用いて神経細胞のスパイク応答を記録した。課題遂行中の神経細胞応答はとても興味深いが、注視中であっても視線はふらつく。これを最小限に抑えてできる限り精密に視覚特徴選択性を計測するため、サルは麻酔・不動化した。学会発表、および論文執筆にとりかかるために必要なデータを得た。 同時に記録した複数細胞のスパイクを含む電位波形から、KiloSort (Pachitariu et al., 2016)により単一細胞由来のスパイクを弁別した。単一細胞のスパイク列と呈示した刺激列との関係を逆相関法により検討し、それぞれの細胞が高次元の視覚特徴空間内においてどのような視覚特徴に選択的に応答しているのか調べた。同時に記録できた神経細胞のすべてのペアについて、時間差を変数とするスパイク頻度(相互相関)を求め、細胞間の機能的結合を検討した。 実験に用いる動物の飼養、手術、実験、実験殺などは、「動物の愛護及び管理に関する法律」など、日本国内の関連法や指針、および国際的な動物実験指針(NIHガイドライン)を遵守し、動物の福祉を十分に配慮して行った。 以上の通り、本研究課題を申請した時に想定していたのと概ね同じペースで研究を遂行している。ただし、COVID-19の流行およびそれへの対応により、本研究課題を申請した時に考えていた最も野心的な実験を行うには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
記録したデータの解析を進め、マカク属サル低次・中次視覚野の神経細胞がどのような神経回路によってその応答特性を獲得しているのか明らかにし、その成果を学会にて発表し、論文を出版する。
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