2020 Fiscal Year Research-status Report
直交軸からの「さりげない」力覚サポートを体感できる空中描画インタフェースの実現
Project/Area Number |
20K11901
|
Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐賀 聡人 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90270793)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ヒューマンインタフェース / 手書き入力 / CAD / 図形入力 / 力覚フィードバック / ファジー理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは,フリーハンドの手書きスケッチ動作を繰り返すだけで精密な幾何作図までも完成できる汎用手書き作図インタフェースの実現を目指し,基礎アルゴリズムの提案から手書きCADシステムの開発に至るまで,20年以上に渡る一貫した研究を展開してきた.この研究は,タブレット上での2Dスケッチ(平面描画)による平面幾何作図はもちろん,没入型VR空間での3Dスケッチ(空中描画)による立体幾何作図をも実現した.しかし,ユーザにとって摩擦の無い3D空間での空中描画は平面描画に比べて安定せず心もとないものとなり,作図効率も低下するという知見を得た.ここから「物理的摩擦を概念拡張した仮想摩擦をユーザに感じさせれば空中描画が安定するのでは?」との発想が生まれた.本課題では,空間直交軸からの「さりげない」力覚サポートを受けて安定した描画を行える空中描画インタフェースを実現する.そのため,初年度である令和2年度では,まず現実の「静止摩擦力」を仮想的に概念拡張した「直交軸別ファジー静止摩擦力」を提案し,これを実際に体感できるシステムを力覚フィードバック装置で実現した. 具体的には,まず,本格的な力覚フィードバック装置 (Phantom Premium 1.5) を設備備品費で調達し,単純な停止判定と静止摩擦力計算に基づく「直交 軸別静止摩擦力」を実現した.次に,停止判定 と静止摩擦力計算に「ファジー点」の概念を導入することで,描画範囲の大小や描画意図の抽象性/具象性に応じて刻々変化する描画の「曖昧さ/厳密さ」に動的に適応できる「直交軸別ファジー静止摩擦力」を実現した.さらに,「直交軸別ファジー静止摩擦力」のパラメータチューニングを行い,多様なサイズや方向の,空間描画,平面描画,直線描画, 静止,および,それらの連続描画に対して,その描画意図に応じた自然な拘束状態遷移が得られることを実験的に確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本格的な力覚フィードバック装置 としてPhantom Premium 1.5 を設備備品費で調達した上で,我々が既に提案していた「直交軸別静止摩擦力」の論理モデルをこの力覚フィードバックシステムで体感できるシステムをリアルタイム制御プログラムとして実装し,実験的のそのシステムの動作を確認できた.さらにこれを発展させ,停止判定 と静止摩擦力計算に「ファジー点」の概念を導入する実装拡張を行うことで,描画範囲の大小や描画意図の抽象性/具象性に応じて刻々変化する描画の「曖昧さ/厳密さ」に動的に適応できる「直交軸別ファジー静止摩擦力」を実現でき,多様なサイズや方向の,空間描画,平面描画,直線描画, 静止,および,それらの連続描画に対して,その描画意図に応じた自然な拘束状態遷移が得られることを実験的に確認できた. この「直交軸別ファジー静止摩擦力」は,令和3年度以降予定している,空間直交軸からの「さりげない」力覚サポートを受けて安定した描画を行える空中描画インタフェースを実装するために必須の基盤技術であるが,これが計画どおりに確立できたことより,本研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価している.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,現在までに確立した「直交軸別ファジー静止摩擦力」を既に開発済みの3D手書き CADインタフェース「BlueGrotto」に実装して実証評価実験環境を構築する.次に,BlueGrottoで幾何作図実験を行い,「直交軸別ファジー静止摩擦力」の有 無による幾何作図達成時間の違いを比較することで,本課題で提案する「さりげない」力覚 サポートによる空中描画の安定化が手書き幾何作図の効率化にどの程度寄与するかを定量的 に評価する.ここでは,静止摩擦力の直交軸を BlueGrottoの直交スナッピンググリッドのXYZ 軸と一致するように設定する.このことで,スナッピンググリッドを意識した空中描画が力覚サポートにより安定し,認識される幾何図形を意図通りに整列配置(スナッピング)させ ることが容易になり,その結果として幾何作図効率が向上すると期待している.さらに「直交軸別ファジー静止摩擦力」を実装したシンプルなデモ・ソフトを制作しWebで一般公開する.これにより力覚フィードバック装置を有する研究 者/技術者等が本課題で提案する力覚サポートの実際を体感し評価できる環境を提供する.
|
Research Products
(2 results)