2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児の行動モデリングによる社会情緒的コンピテンス獲得のモティベーション推定
Project/Area Number |
20K11975
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀尾 恵一 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (70363413)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 行動解析 / 行動モデリング / 逆強化学習 / モティベーション推定 / 自動アノテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,幼児期の社会情緒的コンピテンスの発達に関し,そのメカニズムを情報工学的なアプローチで追及することで,幼児の行動解析に基礎をおいて社会情緒的コンピテンスの獲得過程のモデル構築を目指している.具体的な課題は,(1)幼児の行動を撮影した動画像から画像処理,音声処理に基づいた自動アノテーションシステムを構築すること,(2)幼児の行動モデルを構築し成長に伴う行動の変容を抽出すること,(3)行動モデルに逆強化学習の考え方を適用し行動変容に資する幼児のモティベーションの源泉を推定すること,である. (1)に関しては,(1-1)保育園の遊戯室において,四隅に配置したカメラを用いて幼児たちの位置を推定すること,(1-2)幼児たちが机で話し合いをしている状況下において,マイクロホンアレイを利用して音声の分離,話者推定,反訳の自動システムの構築を行った.(1-1)では,各カメラで人物を検出した結果に基づきカメラ間での人物の対応付けを行い位置の推定するために,各カメラで抽出した人物の足元の座標から座標変換により人物の大まかな位置を推定し,4台のカメラから得られる位置情報から階層クラスタリング法を用いて同一人物を推定した.5メートル四方の対象領域に4名配置した実験では,90%以上の精度で同一人物の対応付けを実現し,位置の精度は誤差30cm以下であった.(1-2)では,音声の分離,定位,反訳に関して個別のシステムを構築した. (2)に関しては,強化学習をモデルとして,観測された実際の幼児の行動を近似することを行った.また,(3)に関してはも(2)と同じデータを用いて逆強化学習によるモティベーション推定を行った.しかしながら,今回用いた幼児の話し合いのシーンでは,データ数が少ないこともあり,各幼児に対する保育士らの主観的な判断とは十分には一致しなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要中の(1)に関しては,ほぼ予定通りに進んでいる.しかしながら,2020年度は新型コロナウイルス感染拡大予防のため、保育園での幼児たちの運動の様子を撮影することができず,データ収集ができなかった.大学内で模擬的な状況を構築し撮影することで代替データとしたが,実データとの相違点などに関しては検証が不十分である.特に,代替データでは,人の間隔を1メートル以上離して,また直立した状態としていたが,人の間隔が近い場合や様々な姿勢をとる場合の検証はほとんどできていない.音声に関しては,分離,話者推定,反訳の各処理は実現できたが,全自動化の課題は残っている. 研究業績の概要中の(2)と(3)に関しては,まず,幼児のお遊戯室での様子の動画が撮影できなかったので,既に取得していた幼児が机に座って話し合いをする動画を用いて行動モデリングとモティベーション推定を行った.2020度は,幼児の発言頻度に着目し,発言頻度を変容させる要因として,他の幼児の視線,他の幼児からの返答などを候補として強化学習による行動モデリングにより検証を行った.結果として,発言時に他の幼児の視線を受けることによりその後の発言頻度が高くなる傾向がみられた.一方,逆強化学習によるモティベーション推定においても他の幼児の視線が発言頻度に影響を及ぼすことが示された.しかしながら,個人差も大きく,保育士の主観とも異なる結果も散見された.従来の発達心理学や行動分析学の知見も含め検証が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,データ収集が最も重要であるので,感染対策を十分に行い,複数の遊具を配置したお遊戯室で幼児が自由に遊ぶ状況を継続的に撮影するための環境構築を行う.撮影した動画に対し,2020年度に実施した人物の位置推定手法を適用し各幼児の追跡を行い,どの遊具で遊んでいるのか,また,幼児の姿勢と動きも考慮することでどのように遊んでいるのかを推定する.2020年度の手法では,幼児間の距離が近い場合や幼児が重なっている場合など不具合が予想されるので,これらの状況に合わせて各種改善を図る.また,行動モデリングおよび逆強化学習によるモティベーション推定を行う.ここれは,保育士や他の幼児とのコミュニケーションがモティベーションと想定されるので,どのような関わりが行動の変容を促すのか検証する. また,用意の話し合いの動画も引き続き収集し,音声処理による全自動アノテーションを実現し,2020年度に引き続き発言頻度の変化を促す他者の行動を検討する.また,話し合いの内容に関して考察を行う.まずは,反訳された会話内容に基づいて,動的なトピックモデルを用いて話題となっているテーマの推定およびその変化の抽出を試みる.これにより,設定されたテーマに従って話し合いをしているのか,雑談をしているのかが分かり,各幼児の特性分析も可能になる. 上記,お遊戯室での行動と話し合いでの発言頻度の変化を通して,各幼児の行動変容に関わる外的要因,また変容の傾向が推定可能であると考えている.推定した外的要因や変容傾向は個人差があるが,各幼児の特性に関して,現場の保育士と考察・検証を行う.さらに,発達心理学や行動分析学との知見も含めて結果を検証する.
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Research Products
(5 results)