2022 Fiscal Year Annual Research Report
社会性昆虫の経路積算説に対する工学的視点からの検証と応用
Project/Area Number |
20K12007
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大川 一也 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (50344966)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LSTM / 位置推定 / IMU |
Outline of Annual Research Achievements |
サハラ砂漠で生息するCataglyphisという蟻は,右に左に彷徨いながら餌を探すものの,餌を見つけると直線的な経路で巣に向かうことから,何らかの位置推定をしていると考えられている.これについては諸説あるが,生物学者の考えている有力な説は,連続した細かい移動の軌跡を足していく経路積算説である.しかし,移動量と向きの情報をどう統合させるのかについての有力な説はない. 数学的にはアフィン変換を用いて移動量と向きを統合し,それを時間積分していくことで位置を求めることができる.しかし,餌を探しながら昆虫がそのような高度な計算をやっているとは思えない.そこで本研究では,深層学習の一つである Long Short-Term Memory(以後,LSTM)を用いて統合させることとした.LSTMを採用した理由としては,近年の深層学習の能力が高いこと,時系列情報を扱えること,記憶容量が比較的小さいことなどである. 実験では,移動量を計測するための加速度センサ,向きを計測するための角速度センサを搭載した移動ロボットを製作した.また,高精度なRTK-GNSSから得られる位置や速度を真値とし,それに基づいてLSTMの学習を行った.結果としては数学的な数値積分によって算出した従来手法よりも,高精度に位置推定ができることを確認した.特に着目すべき点は,ロボットが停止した時に必ず速度をゼロにできている点である.ロボットを走行させると,路面からの振動を受けるため,単純に数値積分した場合,停止時に速度がゼロになるとは限らない.しかし,提案したLSTMは,理論上は判別しにくい等速移動中と停止中を,振動の有無で区別していると考えられ,停止した時は速度がゼロを出力していた.結果として,速度の累積誤差をリセットでき,位置推定の精度向上につながった.これらの成果は,特許出願をしている.
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