2020 Fiscal Year Research-status Report
ロボットから人間の2足歩行に応用する安定化ペースメーカーの研究
Project/Area Number |
20K12014
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
米田 完 千葉工業大学, 先進工学部, 教授 (70221679)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 2足歩行ロボット / 受動歩行 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで研究を続けている慣性アシストを用いた2足歩行を発展させ、本研究では歩行運動を生成するだけでなく、リズムを保って安定性を維持する「安定化ペースメーカー」の実現をめざしている。そのため、歩行の状態をセンシングしながら安定な方向に誘導するようにアクチュエータを駆動する制御法を探求した。 足踏みのみを行う実験機による試行は、単純ホイール回転の加減速をする方法について行った。センシングにもとづいたアクチュエータ制御の効果が若干ながら見られた。ただし、効果の計測と評価方法が確立していないため、今後検討が必要である。 また、等身大2足歩行ロボットによる各種の実験を進めている。足踏み実験機と同様の単純ホイール回転によるアシストについては、ホイールの大きさ(慣性モーメント)を変えて実験を行った。その結果、この方法の限界が明らかになってきた。つづいて、カメラ撮影において振動を抑制して画面を安定させることを目的とした市販品のジャイロスタビライザーを利用いたアシストを試みた。ジャイロスタビライザーを駆動軸の上に配置して回転させ、その回転のしにくさから疑似的に大きな慣性モーメントとなることを利用したものである。角速度に限界があるなどの問題が明らかになり、引き続き検討している。さらに、この限界を克服することを目的として、自作のジャイロによるアシストも試みている。大きなアシスト効果が見られ、かつ応答がよく制御性に優れる反面、ジャイロの向きに限界があるために継続時間が短い欠点もある。今後、制御方法を改善していけば総合的に有望と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
はじめに、左右揺動の足踏みのみを行う実験機において、床から脚がどれだけ上がったかを光学センサで検出し、アクチュエータを制御することを試みた。光学センサにはレンジファインダ型レーザーセンサを用い、慣性アシストはロール軸まわりのホイールをモータ直結で加減速させた。実験では、従来の時間計測のみによってホイールを加減速する手法に比較して若干だが足踏み運動の周期が安定した。とくに、重心が支持脚接地点の直上近くまで寄って長周期になる歩行では、反対側に倒れてしまう状態に近づくため、運動の乱れがあると転倒してしまうが、そのような状況での乱れが小さくなったと思われる。ただし、これまでの研究でホイールを用いた慣性アシストよりも安定性が高いと見いだしている地面をキックすることによる足踏み運動生成に比較すると安定性が高くなったとは言えない程度である。 つぎに受動歩行ベースの等身大2足歩行ロボットによる実験を行った。このロボットは足先のキックによる左右揺動(ロール軸まわりの回転)運動生成ができ、これに慣性アシストによって左右揺動の補助を行う。また、遊脚の前振り出しも、おもりの直動加減速運動による慣性アシストで生成する。左右揺動アシストは、単純なホイール回転、新たに導入した市販のジャイロスタビライザーによるもの、ジャイロを自作したもの、の3種類について行っている。単純ホイールは、最初の試行では小さなホイールをモータでダイレクトに駆動したが、慣性モーメントが不足気味で、すぐに高速回転に達してしまった。慣性モーメントを大きくしたホイールは駆動トルクが必要なために約1/4の減速機を介して駆動したが、重量増でロボット全体の慣性が大きくなった。ジャイロスタビライザーおよび自作ジャイロによる実験は、装置を製作して実験を開始したばかりで、初期の試行データのみ取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
単純ホイールによるアシストは、小型ではアシスト量が不足し、大型にすると重量が増すことから、ひとまず試行は終了させ、他の方法を探求する。 市販のジャイロスタビライザーは、外からの回転速度が大きくなると同調が外れて内部のジンバルが回転を始めてしまい、疑似的に大きな慣性モーメントをもつ初期状態を維持できない。これによってアシストのための駆動に限界があり、これを考慮した制御法が必須である。現在は単純にモータ印可電圧制限を設けて、モータの起電力が設定値以上にならないようにしている。しかし、これではリミッター機能のみで、リミットに達しないよう角速度が小さい方向に誘導する制御が必要であり、これを検討する。 自作のジャイロの軸の向きを変えるようにトルクを与えて、そのジャイロモーメントを用いるアシスト方法は、アシスト量が大きい反面、アシスト継続時間が短い。これは軸にトルクを与えると旋回し、ジャイロの向きが変わり、アシストしたいロール軸回転運動の向きからずれてくるためである。現状では軸の向きに制限を設けている。この制限はリミッター機能のみであるため、軸が中央に寄るような制御が必要である。今後はこれを検討する。また、ジャイロモーメントは別に、軸方向を変える駆動トルクの反力でヨー軸まわりのモーメントが発生するため、これが遊脚振り出しアシストに貢献できるように、軸を斜めにする試みを始め、有効と思われるが、これを検討して有利な軸の設定方向を見いだす予定である。 また、歩行周期の安定性を評価する手法を検討し、妥当と思われる方法によってこれまでの制御法を比較できるようにする。等身大2足歩行ロボットにおいても、レーザーセンサによる計測にもとづいてアクチュエータ制御を行う準備はできている。今後は実験データを取得して比較検討を行っていく予定である。
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