2021 Fiscal Year Research-status Report
A study on the laid-back singing in black music
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20K12037
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
江村 伯夫 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 准教授 (80590174)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グルーヴ感 / 歌唱 / ブラックミュージック / マイクロタイミング / レイドバック / 後ノリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,以下の2つの内容について順次的に取り組む計画であった. 1.大量楽曲データから歌唱音の逸脱量(本研究ではレイドバック量と定義)を抽出し,その時系列データを分析することにより,レイドバック歌唱のモデル(仮説)を提案する. 2.「1」によって提案された仮説を検証するための心理実験を実施する. 2020年度は,「1」について取り組み,国内外におけるR&Bを代表する楽曲計100曲を対象にレイドバック量の調査を行った.結果,国内の楽曲はほとんど遅れが見られない上,遅れの時系列データにシステマチックな傾向が確認できなかった一方で,国外の楽曲でははっきりと知覚できる大きな逸脱が見られた上,これらが旋律のフレーズ単位で周期的な変動を持つ傾向が確認できたことから,国外の楽曲における逸脱は意図的なものであり,さらにこれがレイドバック歌唱における強いグルーヴ感(レイドバック感)を表現するための重要な要素であるという仮説を立案した. 2021年度は,「2」について取り組んだ.すなわち上述の仮説を検証するために,歌唱を伴奏から遅らせた刺激を用意し,これらに対するグルーヴ感(レイドバック感)を調査するための印象評定実験を実施した.結果,そもそもレイドバック感の低い歌唱は,伴奏から歌唱を遅らせてレイドバック量を大きくしてもレイドバック感が向上することはないということが明らかとなり,歌唱のレイドバック感は,単純に伴奏からの逸脱で表現できるものではなく,歌唱に含まれる様々な抑揚によって表現され得るものであるということを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は,2020年度の調査の結果得られた仮説を検証するための心理実験を計画し,実施することにあった.本年度は,国内外の楽曲計20曲を対象に,伴奏に対して歌唱を遅らせて合成した刺激に対するグルーヴ感(レイドバック感)を評定する心理実験を実施し,仮説を支持する結果が得られたことから,概ね当初の計画通りに進められていると考える. しかしながら,新型コロナウィルスの影響により関連学会での発表ができず,さらに論文の執筆も停滞してしまい,この点において予定していた成果を挙げることが叶わなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの取り組みの結果,歌唱のグルーヴ感(レイドバック感)が,単純に伴奏からの逸脱で表現できるものではなく歌唱に含まれる様々な抑揚によって表現され得るものであるということを明らかにした.しかしながら,歌唱に含まれる様々な抑揚とは何か,またこれを構成する要素とグルーヴ感(レイドバック感)との関係については不明である.次年度は,この点を明らかにするために,レイドバック量の周期的な変動に着目し,この特徴とグルーヴ感(レイドバック感)との関係についてさらに調査する予定である. また,昨年度からの研究成果をまとめ,コロナウィルスの蔓延状況を見ながら国際会議をはじめとする各学会・研究会にて発表を行うとともに,学術論文の執筆にも精力的に取り組む予定である.
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Causes of Carryover |
心理実験における実験参加者への謝金および国際会議をはじめとする各学会・研究会への旅費として予算を計上していたが,謝金については他の研究予算によって支出することができたため,また旅費については予定していた学会・研究会への参加が叶わなかったため,それぞれの支出が大幅に削減できたことによる. 心理実験においては次年度も継続して実施する必要があり,また学会・研究会には意欲的に参加する予定であるため,生じた差額は次年度に使用する.
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