2022 Fiscal Year Annual Research Report
複雑な器官形態を実現する細胞集団運動方向のスイッチング機構-力学応答の観点から-
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20K12054
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
大塚 大輔 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 特任研究員B (40632865)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 形態形成 / モルフォゲン / 細胞集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
器官固有の形態は、等方的な組織の拡大や縮小では決して実現することはできず、方向依存的な組織変形が時空間的に制御されることで達成される 。したがっ て、方向依存的な変形がいつ、どこで、どの方向に起こり、それがどのようにスイッチ (例えば伸長方向が90度変化するような大きな変形) していくのか、その 制御機構を明らかにすることこそが器官形態形成機構の理解の本質である。本研究では、『複雑な器官形態を実現する細胞集団運動方向のスイッチング機構-力 学応答の観点から-』を研究課題名とし、前脳形態形成を対象に細胞集団運動方向がいかにして特定の発生段階で切り替わるのかを解明することを目指す。申請者らが開発した多階層動態の計測・解析手法を利用し、組織の力学状態の操作・摂動を通じて、スイッチ機構に関与する化学シグナル経路と細胞の力学応答の関係性を明らかにする。さらに本研究課題で得られた知見を利用して、スイッチング機構の操作に挑む。これらの研究が達成されることにより、複雑な器官構造を 自由にデザインできるための基盤技術となることが期待される。 本年度は「眼胞の伸長」過程における細胞の力学応答能と化学シグナルの一つであるSHHシグナルの依存性についての定量解析を進めた。これまでの遺伝学的な解析からSHHシグナル経路の阻害と眼胞の伸長不全によって生じる表現型である単眼症の対応関係は明らかとなっていたが、本研究はSHHシグナル経路の阻害は細胞の力覚能を不全にすることで細胞集団運動方向を乱し、その結果として形態異常が生じていることを明らかにした。このことは形態形成過程における遺伝子-細胞-組織という多階層の関係性に対する新たな知見を提供することができたと考えている。
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