2020 Fiscal Year Research-status Report
苦味受容体におけるAI・シミュレーション・進化解析の融合解析フレームワークの構築
Project/Area Number |
20K12063
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩田 浩明 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (40613328)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工知能 / シミュレーション / 進化 / 苦味 |
Outline of Annual Research Achievements |
データに乏しい状況において、AIとシミュレーションを組み合わせることでデータを生成しながらAIモデルを構築する取り組みが広く行われている。苦味受容体でも、オーファン受容体が多いことからも既知リガンド情報が少ない。本研究ではAIとシミュレーション解析にヒト以外の生物種のデータも使用し、生物種間比較により進化的な情報を加えた解析手法を開発する。具体的には、様々な生物種の苦味関連データを用いた進化解析を行い、その結果を取り込んだAIモデルを構築する。AIモデルによる予測に加え、シミュレーション解析で新たな苦味分子を探索する。さらに、得られた結果から苦味受容体の進化過程やメカニズムを解析することも可能となる。 2020年度は苦味受容体・苦味分子のデータ収集と調査を行った。苦味受容体に応答する既知リガンド情報はBitterDBやMeyerhofらの論文から苦味分子を、苦味受容体情報とその類似タンパク質情報は、BitterDBやUniProt、GenomeNet、及びSWISS-MODELサーバを使用して苦味受容体の配列相同タンパク質を収集した。加えて、苦味受容体の立体構造はいまだ解明されいていない。そこで、シミュレーションを実施するためには、ホモロジーモデリング等で立体構造をモデリングする必要がある。ヒトの苦味受容体に対して、配列解析を行った。まず、同じ苦味受容体である25 種の受容体同士については、アミノ酸配列の一致度はそれほど高くないことがわかった。また、25種の苦味受容体いずれにおいても、配列相同性が高い立体構造既知のGPCRは存在せず、最も高い場合でもアミノ酸一致度が28%であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
苦味分子と苦味受容体の調査・収集を行った。苦味分子については、ヒトの苦味受容体25種に応答する既知リガンド情報を収集した。苦味に関する受容体や化合物などの情報を収集している104の苦味分子と25種のヒトのTAS2Rのアッセイデータを報告しているMeyerhofらの論文とBitterDBからデータを収集した。例えば、TAS2R16の活性化リガンドは8個、不活性化リガンドは90個となった。 苦味受容体はヒトでは25種類ある。同じ苦味受容体である25 種の受容体同士にもかかわらず、アミノ酸配列の一致度はそれほど高くないことがわかった。マルチプルアラインメントした結果、平均して類似度は30%程度であった。その中、TAS2R19、20、30、31、43、45、46、50の8受容体間では65%以上であり、これら8種類の苦味受容体は特に相同性が高い事を示した。苦味受容体の立体構造はいまだ解明されいていない。そこで、シミュレーションを実施するためには、ホモロジーモデリング等で立体構造をモデリングする必要がある。苦味受容体と配列相同性のある立体構造既知のタンパク質を収集するために、UniProt、GenomeNet、及びSWISS-MODELサーバを使用して苦味受容体との配列相同タンパク質を調査した。配列相同性解析より、25種の苦味受容体いずれにおいても、配列相同性が高い立体構造既知のGPCRは存在せず、最も高い場合でもアミノ酸一致度が28%であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、苦味受容体のアミノ酸配列と苦味分子の化学構造の情報を用いてAIモデルの構築の検討を行う。まず、昨年度に引き続いて苦味受容体の進化解析を行う。具体的には、収集した苦味受容体のアミノ酸配列および苦味分子を用いて、様々な生物種のアミノ酸配列の類似度を解析し種を超えて保存している領域、あるいは大きく変異している領域を抽出し、AIモデルへの学習方法を検討する。また、化学構造情報と配列情報のマルチモーダル学習を利用した深層学習の検討も行う。マルチモーダル型の学習の場合は、生物種を超えて学習することが可能となる。そのため、ヒト以外の苦味受容体と苦味分子を収集し、同時に学習することにより学習データ量が増え、より高精度な予測モデルを構築できると考えられる。
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Causes of Carryover |
初年度に、プロトタイプ作成のため、およびデータの蓄積・解析のため、記憶容量が比較的大きなメインメモリやハードディスクを備えた計算機の導入を行う予定であった。コロナの影響で一部納品に間に合わないことが発覚し、購入計画を先送りにした。ただし、公共のスーパーコンピュータを利用することで、研究計画に大幅な遅れは生じていない。
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