2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of the phosphorylation latch mechanism for the transcriptional regulation via intrinsically disordered regions
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20K12069
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
笠原 浩太 立命館大学, 生命科学部, 助教 (90634965)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仙石 徹 横浜市立大学, 医学部, 講師 (60576312)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分子動力学法 / 転写因子 / 天然変性領域 / 翻訳後修飾 / 転写制御 / 分子シミュレーション / 天然変性蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では転写に関わる天然変性領域(IDR)の分子メカニズム、特にリン酸化が及ぼす影響を、分子シミュレーションによって検討を行う。これまでの研究で転写因子Ets1について明らかにされた「リン酸化ラッチ機構」(Kasahara, K. et al. (2018). Nucleic Acids Research, 46(5), 2243-2251) が他の転写因子にも見られるのか、その普遍性を検証する。まず(a)データベースよりヒト転写因子の配列および構造的特徴を大規模に検証し、リン酸化ラッチ機構を持ち得る転写因子を推定した。多数の候補を得ることができ、その成果を第9回生命医薬情報学連合大会においてポスター発表を行った。(b)そのうち2つの転写因子について分子シミュレーションを行い、IDRの構造アンサンブルを得た。(c)さらにその結果を検証するため、in vitro実験を計画中である。これに伴い、通常のシミュレーション手法では計算困難なIDRの解析を実現するため、新たなシミュレーション手法およびプログラムの開発を実施した。方法論、プログラムについては査読付き論文として報告を行った(Kasahara, K.. et al. (2020). Biophysics and Physicobiology, 17(0), 140-146; Higo, J. et al. (2020) Biophysics and Physicobiology, 17(0), 161-176)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は大きく下記3ステップより成る:(a) ゲノムワイドな候補転写因子の探索、(b) 独自の分子動力学法(MD)を用いたメカニズム解析、(c) 実験による検証。2020年度において(a)を終了し、(b)について方法論の開発と、2つの転写因子の計算を行った。これによって(c)を実施する準備が整ったといえる。概ね計画通りに推移してきていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計算が終了した2つの転写因子について、詳細な解析と実験による検証を行う。それぞれの転写因子について、1報ずつ査読付き論文を執筆する予定である。 研究の過程においていくつか課題が浮上したため、技術的な開発も継続して行う。ひとつは、分子シミュレーションにおけるサンプリング効率の問題である。IDRは極めて広い構造多様性を持つため、その構造アンサンブル全体を計算するには膨大な計算が必要となる。我々の開発したVirtual-system coupled canonical molecular dynamics (VcMD)法は高効率なサンプリングが可能であるが、それでも1つの転写因子を検討するのにスーパーコンピュータを用いて1ヶ月程度の計算を行う必要がある。これを改善するため、更なる方法論の高度化を行う。もう一つは、IDRがもたらす液-液相分離現象の検討である。複数のIDRが流動的な集合体を形成する液-液相分離現象が近年注目を集めており、様々な検討が為されている。特に転写過程への関連が強く示唆されており、また翻訳後修飾の重要性が知られている。この現象とリン酸化ラッチ機構の関連を調べるため、液-液相分離現象の検討を行うためのシミュレーション技術の開発と応用を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新興感染症の流行により学会等がオンラインとなり、旅費の執行を行わなかった。 余剰分の予算は客員研究員の雇用のための費用へと充てる計画である。
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Research Products
(23 results)