2021 Fiscal Year Research-status Report
計算機シミュレーションによるがんのクローン進化・腫瘍内多様性の解明と予測への挑戦
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20K12071
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
加藤 護 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (40391916)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん細胞進化 / 計算機シミュレーション / 個別化医療 / がんゲノム医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度考案したCNA を取り入れたモデルを実装した。また、それに伴って従来の点変異発生過程も改良し、実装した。すなわち、相同(両親)染色体の区別をし、さらにCNA を、deletionまたはduplication によるlossまたはgain とにそれぞれ分けて、deletionとduplication 生成過程を相同染色体上に実装した。また、CNA およびtumor purity を考慮したVAF (変異アレル頻度)の計算方法を考案し、実装した。これらによって、必ずしもtumor purity が100% に近くなく、対象遺伝子にコピー数変異が発生している症例に対しても、適用可能となった。 また、これまで曖昧だったシミュレーション初期細胞数の条件を明確にした。具体的には、正常細胞のターンオーバー数を0 にする平衡方程式を導き、これを実装した。適用すべき適切な症例データとして、TCGA から大腸がん2症例、肺がん2症例を選んだ。 ABC 適用の改良として、1)束縛があって扱いが難しいweight parameter ではなく、それを変換して束縛のないbreakpoint parameterを使う、2)観測VAF とシミュレーションVAF の合わせ方の明確化(検出限界[eg, 10%]で切って、一方で0 とならないsite を合わせる)、などの技術的工夫をした。 計算機シミュレーションを個別化医療に適用する大きな枠組みであるPDCA (計画・実行・評価・改善)サイクルを考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該モデルの技術的進展と共に、計算機シミュレーション・モデルを個別化医療に適用する大きな枠組みであるPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルの発想に至ったため。P で、CNA 考慮モデルなどのモデル、様々なパラメータ集合を考案し、D で、TCGA 等のデータに適用する。C で、ABC 後のロジステック回帰によるモデル選択や、VAF に対する決定係数・相対誤差によって客観的にモデルを評価し、A で、モデルやパラメータの改変を行う。この大きなメタ枠組みの中では、現在実施者が改良している個別のモデルは、複数ある可能なモデルの一つに過ぎず、実際には観測データに対するモデル評価を通して、複数のモデルを切磋琢磨することとなる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は改良されたモデルを前述の症例に適用し、観測データの再現と共に、損傷遺伝子の仮想的介入によるがん細胞増殖(薬剤効果予測)をシミュレートする。観測データの再現においては、ABC 後のロジステック回帰によるモデル選択や、VAF の決定係数・相対誤差によるモデル評価を実施し、再現の精度を見極める。可能ならば複数のモデル、パラメータ集合を比較する。PDCA サイクルを回してある程度の再現精度が得られたら、損傷遺伝子の仮想的介入を実施して効果予測を行い、各症例各遺伝子のがん細胞増殖への影響の生物学的妥当性を考察する。論文執筆を開始する。
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Causes of Carryover |
適格な技能・能力を有した研究協力者の採用に至らず人件費・謝金使用が抑制されて0 より大きくなったが、翌年度は人件費・謝金、研究遂行に必要な外注として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)