2021 Fiscal Year Research-status Report
A pedestrian guidance method with user adaptation based on emotional data extracted from walking history toward secure and comfortable life
Project/Area Number |
20K12074
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
古川 宏 筑波大学, システム情報系, 准教授 (90311597)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歩行者ナビゲーション / 高齢者 / 個人適応 / 心情推定 / 高度道路交通システム |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者の生活の質向上に役立つ歩行者ナビの実現に向け、経路上の環境要因に対する身体的困難さ、心的脆弱性、安心感、嗜好を定量的に考慮したモデルを用いた経路探索法を開発している。本研究の目的は、多様な個人差への対応を課題として、1)“各ユーザの環境要因に対する主観的評価”の推定手法と、2)“環境要因に対する主観的評価”に基づく個別コストモデルの適応的調整法の開発である。本年度は、以下の2つの研究に取り組んだ。 1.「A.“各ユーザの環境要因に対する主観的評価値”の推定手法の開発」:高齢者ユーザの属性と希望する経路条件間の関係性をモデル化し、これを基礎モデルとしてユーザ個人に向けて適応的に改善する手法の開発を行った。まず高齢者に対してアンケート調査を実施し、ユーザごとに異なる経路への嗜好性を取得し、経路の推薦モデルを作成した。結果、「年齢」や「休憩を希望する間隔」といったユーザ属性が経路選択に一定の影響を及ぼしていること、また性別によって属性による影響が異なることなどが判明した。経路モデルの精度は低く留まり、事前に得られる情報のみからユーザの嗜好性を高い精度で推測することは困難であることを改めて確認した。引き続き、このモデルを個々ユーザごとに適応的に改善する手法として、歩行中のデータや歩行後の経路評価を利用したモデル改善手法(簡易版)を提案し、歩行実験によりこれの有用性を確認した。 2.「B. 実地実験に用いる歩行者ナビ・プロトタイプシステムの構築」:実験参加者による長期・複数回の利用を実現する環境として、携帯端末を利用したプロトタイプシステムを構築した。提案する経路探索法を用いた経路誘導、利用者が経路を変更した際の再探索など、実用システムとほぼ同じ環境を可能とする。GISシステムに基づく歩行者ナビ用サーバと、ユーザインタフェースとなる携帯端末からなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.昨年度実施予定であった「A.“各ユーザの環境要因に対する主観的評価値”の推定手法の開発」は、昨年度末において半年ほどの遅れが生じていた。これは、COVID-19のリスクを考慮し、主目標である高齢者を実験参加者とする要素研究を次年度に延期したためである。本年度はこれを実施し、「実移動経路データなどに基づいたユーザ評価の推定機構の開発」および「経路評価用インタフェースの開発」を完了した。 2.「B. 実地実験に用いる歩行者ナビ・プロトタイプシステムの構築」は予定通りに完了した。本年度予定の“歩行者ナビ用サーバ”の構築、「GISシステムに基づく認知的負荷評価処理システム」および「ユーザインタフェースとなる携帯端末」の構築を完了し、実際にユーザが歩行者ナビサービスを体験し得るサービスを利用可能としている。 3.本年度実施予定であった「C.個別ユーザへの適応のためのモデル調整手法の構築」は、本年度始めの再計画通りに来年度に実施する。C.は「ユーザ評価データに基づくコストモデル調整機構の設計」と「プロトタイプシステムを用いた長期利用実験による評価と改善」とからなるが、前者については本年度にその一部に取り組み始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「C.個別ユーザへの適応のためのモデル調整手法の構築」(R4全期):「コストモデル調整機構の構築」(R4前期)および「プロトタイプシステムを用いた長期利用実験による評価と改善」(R4後期)からなる。前者では、提供経路に対する利用者の評価により個々に特化したコストモデルへと調整する機構を設計する。コストモデルの調整機構では、取得した各ユーザの情報を用いて身体的負荷、安心感、嗜好などの各評価関数のパラメータを変更することで、個人適応を実現する。後者では、コストモデル調整機構を組み込んだプロトタイプによる長期の利用実験を実施することで、各機構の有用性と問題点の確認、問題の改善を通して手法を開発する。前者で設計した機構を組み込んだプロトタイプシステムを用いて、実験参加者による長期の日常利用実験を実施する。長期にわたる利用において、主観評価推定機構、主観評価用インタフェース、歩行挙動情報の取得法、避難時情報の取得方策、モデル調整ルール等の評価と改善を実施する。 2.「D.実用システムに必要となる基本仕様の策定」(R4後期):提案手法の実用において、システムに備えるべき機能及び仕様を明確にする。利用者に安心で快適なナビ支援サービスの提供を実現するため、提案システムの構築過程で生じた技術的課題、実験参加者による利用の観測結果、および実験参加者による主観的評価結果から、現在の最新機材の能力・制約を考慮することで、実用システムに要求される技術的要件や解決すべき技術課題を確認し、基本となる仕様の策定を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 令和4年度に実施する「C.個別ユーザへの適応のためのモデル調整手法の構築」において、その精度の向上を狙い、実験参加者や状況の多様性を確保するために、人数の増加を計画している。そこで、令和3年度における実施費用に学内研究費を用いることで、このための予算を確保した。 (使用計画) 令和4年度に実施する「C.個別ユーザへの適応のためのモデル調整手法の構築」において、提案する手法の実証的評価と改良を目的として、構築した歩行者ナビ模擬システムによる認知実験を実施することを計画している。このとき、実用化に向け多様なユーザを想定することが必要なため、高齢者および青年の多数の実験参加者に対する謝金の支払いを予定している。予算の不足分については、報告者の学内研究費より充足するため、何ら問題はない。
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