2020 Fiscal Year Research-status Report
複数テキストからの学習に対する図の活用による支援の基礎的研究
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20K12095
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 治 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (90337709)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複数テキストの読解 / 概念図 |
Outline of Annual Research Achievements |
「多数かつ多様なテキストからの統合的な内容理解」を対象とし,教育・学習場面でのテキストからの理解を促進するための図の活用に注目した実験的検討を行った.そこで研究の第一のステップとして,テキストに付与された概念図による複数テキストの読解への影響を検討するため,「AI開発」を題材としたテキストおよび概念図を用いた実験を実施した. 具体的には,「AI技術に関する概念および用語解説」のテキストと「AI開発における失敗事例」のテキストを与え,それらの統合的理解を求めた.これらとともに,プロセス可視化の表現形式であるカスタマージャーニーマップを参考にして「AI開発のプロセスとクライアント/ベンダ双方の役割」の概念図(以下ではAIマップと表記)を用意し,この概念図の有無によるテキスト理解の差異を明らかにした.実験の参加者には「AI開発における失敗事例」の内容を「概念および用語解説」と結びつけ,失敗原因の特定をすることを求めた.AIマップを提示した条件では,開発フローに関する視覚的な表現に基づき,失敗が生じた段階やそこに関わるAI開発独自の特徴(一般的な情報処理システム開発とは異なる特徴)が整理された.それに伴い,各テキストから抽出された情報を結びつけ「失敗原因の特定」が促進されたことが明らかとなった. この実験に至るテキスト材料の準備や概念図の提案については,2020年度教育システム情報学会第45回全国大会において発表が行われた(辻泰輝・山崎治:AI開発においてクライアント側が持つべきリテラシの習得を促す教材の提案,教育システム情報学会第45回全国大会,pp.33-34). 他方,今回制作されたAIマップは含まれる情報が多く,テキストとの適切な結びつけが比較的困難であった箇所も確認された.今後にむけた利用テキストおよび概念図の修正点についても明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テキスト読解における概念図利用の効果を明らかにするにあたり,材料となるテキストの内容の選定および概念図の選定を行う必要があった.これらのテキストは,対象者にとって既知の情報ではないことや,理解にあたり情報の適切な整理が必要であることが求められた.いくつかの候補を検討し,今後の社会的なニーズの高さも考慮し,「AI人材育成」を題材としたテキストを選択した.さらに,AI開発における「クライアントサイドの視点」を意識させるための概念図として,本研究独自の「AIマップ」を作成した.今後の検討にも活用できる材料の作成が行えたことになる. また,「AI開発に対して直接的な経験を持たない学生」を対象とし,作成したテキストおよびAIマップを用いた「テキストからの学習」を題材とした実験を実施できた.コロナウィルス感染防止の観点からオンライン形式で,参加者のペースによる実験となったが,概念図であるAIマップによるテキスト読解の促進効果を確認することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
実験材料となるテキストおよび概念図については更に制作を行うとともに,テキスト読解を行った参加者が概念図を収集し,そのパタン化を試みる.さらに,概念図を描画することによるテキスト読解の影響についても検討を行う予定である. そのため,複数テキストの読解過程における概念図の作図の様子をプロトコル実験の手法を用い観察することを計画している.特に,テキスト読解過程において,概念図がどのように描かれ,また描かれた概念図がそれらのテキストの統合的理解にどう影響するのかという,テキストと概念図間の相互作用にも着目した分析を行う.
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Causes of Carryover |
計画段階では学会参加に伴う旅費および実験参加者に対する謝金の計上を予定していたが,COVID-19感染防止のための学会出張の抑制や,対面型の実験実施の中止に伴い,次年度使用額が生じた.
学会出張の抑制は令和3年度も継続される可能性が高いが,実験についてはオンラインでの実施を行なえるよう,オンライン実験環境の整備にも助成金の活用を行う予定である.
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Research Products
(2 results)