2021 Fiscal Year Research-status Report
複数テキストからの学習に対する図の活用による支援の基礎的研究
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20K12095
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 治 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (90337709)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多様なテキストの読解 / 多数のテキストの読解 / クラウドソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
「多数かつ多様なテキストに関する統合的理解」について検討を行うため「クラウドソーシングを用いた多数かつ多様なテキストの収集」と「自然言語処理技術によるテキストの多様性評価」を実施した.具体的には,クラウドソーシングを用いて性別および年齢の異なる203人に依頼し,共通のテーマに対する609のテキストを収集した.不備のあるものを除き588のテキストを対象に自然言語処理によりテキスト間の類似性を評価しカテゴリ分けを行った. さらに,これらの多数のテキストを「他者の意見」とし,それらから抽出された「参考テキスト群」の読解に基づいて意見を生成する実験を行った.参考テキスト群として,異なるカテゴリそれぞれからテキストを抽出する「多様性の高いテキスト群」と同じカテゴリ内からテキストを抽出する「多様性の低いテキスト群」を用意し,それぞれの参考テキスト群が読解および意見の生成に及ぼす効果を確認した. 実験の結果,多様性の高いテキスト群を参照した実験参加者は,様々な観点からの意見の価値を認め,それらを取り入れて自身の意見を更新しようとすることがわかった.しかし,実際に自分の意見を生成する際には,多様な意見を整理することが難しく,満足できる自身の意見を生成するには至らなかったことがわかった. これらの結果から,多様性の高い複数テキストの提示に対して,読解を行う人に対するテキスト内容の整理の支援が必要であることを明らかにした.今年度の実験結果では,図的な情報提示の効果の検討までには至らなかった. この実験の前提となるクラウドソーシングでの意見収集について,収集された意見の質に関する調査については,2021年度認知科学会第38回全国大会において発表が行われた(荒井武蔵・山崎治:「クラウドソーシングにより収集される他者意見の多様性と質」 ,日本認知科学会第38回全国大会,pp.188-194).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度の研究では,研究計画のうち,多様性の高い多数のテキストを読解することの特徴について明らかにすることができた.それらの結果,多数の多様なテキストを呈示することで,それらに含まれる観点を抽出することを通じ,自身の意見を更新しようとする行動が起こりやすくなることがわかった.その一方で,多数の多様なテキストを整理すること自体が難しく,生成された意見に対する満足度は低く評価されることがわかった. 研究としては,このような「整理の難しさ」に対して,図的な表象による支援を行うことを提案し,その効果を検証することが求められる.しかし,2021年度の研究では,「支援の必要性」を明らかにすることはできたものの,「図的表象を用いた支援の具体的な方法」および「支援の効果」については明らかにすることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
多様なテキストを呈示して意見生成を求める際に,それらのテキストの整理を支援することが必要であることは明らかとなった.しかし,多様なテキスト同士の関連性を整理し,自身の意見生成にとって重要な観点を抽出する過程に対して,更なる支援が必要であることが明らかとなった. 特に,今後の研究では,「多様なテキストの整理」に対して,図的な表象を活用することの効果を検討していく.図的表象を用いた支援の手法として,いくつかの手法が考えられる.一つは,多様なテキストのそれぞれ内容を個々に図式化し,それらを一覧・比較する手法が考えられる.もう一つは,多様なテキスト群におけるテキスト間の関係を図として表現する手法が考えられる.これらの手法による支援の効果の違いを検討することで,多様な多数のテキストの読解における図の利用の効果を検討していく
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Causes of Carryover |
計画段階では学会参加に伴う旅費および実験参加者に対する謝金の計上を予定していたが,COVID-19感染防止のための学会出張の抑制や,対面型の実験実施の中止に伴い,次年度使用額が生じた.
社会的にもウィズコロナの認識が広がり,学会・研究会の対面あるいはハイブリッド形式での開催が行われる予定のため,その旅費に充当する
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Research Products
(1 results)