2023 Fiscal Year Research-status Report
複数テキストからの学習に対する図の活用による支援の基礎的研究
Project/Area Number |
20K12095
|
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
山崎 治 千葉工業大学, 情報科学部, 准教授 (90337709)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 複数テキストの読解 / 統合的理解 / 先行オーガナイザ |
Outline of Annual Research Achievements |
「複数テキストの統合的理解に対する補助情報の活用」の観点から,教育心理学的な視点を取り入れた心理実験を行うなど研究を進めた. 2022年度に引き続き,第二言語教育や教科教育における「先行オーガナイザ」(Advanced Organizer)の活用した「複数テキストに関する統合的理解」を試みた.大河内・深谷(2007)の研究で用いられた課題を参考にして,相補的な関係性をもつ2つのテキストに対して,先行オーガナイザの与え方による統合的理解の促進について検証を行った.先行オーガナイザの与え方としては,(1)提示タイミングと(2)内容・形式を操作をした.(1)の提示タイミングとしては,各テキストを読む直前にそれぞれの内容に即した先行オーガナイザを与える「個別条件」と,2つのテキストをまとめた内容を最初に提示する「統合条件」を設けた.また,(2)の内容・形式については,先行オーガナイザとしてテキストの「要約」を与える条件と,テキスト内容に即した「問いかけ」を与える条件を設けた. 先行オーガナイザとなる各文は生成AI(ChatGPT3.5)を用いて作成された. 大学生を対象とした実験の結果,「個別条件」として「問いかけ」を与えることで,統合的な理解過程のなかでも比較的浅い理解が促進されることが明らかとなった.これらの実験のなかで,「提示タイミング」の効果に関する実験は2023年度第48回教育システム情報学会全国大会で発表を行った(高山嘉宏・山崎治「先行オーガナイザがテキスト統合に与える影響」,第48回教育システム情報学会全国大会,pp.177-178).
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
複数テキストの統合的理解に関して,「先行オーガナイザ」の観点に基づき,テキストの補助情報の与え方に関する実験的検討を行うことができた.実験の結果から課題点も明らかとなっており,追加的な実験を行うのとともに,補助情報として図的情報を活用する実験の計画・実施へと進行していく手掛かりができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
複数テキストの統合的理解における図的情報の影響に関する実験について,計画に従い実施を行う.これまで実施した実験結果を踏まえ,追加的なテキスト情報を与える効果についての追試を行い,その効果を改めて確認していく.さらに,補助情報の形式をテキストから図へと変えて,新たな効果が得られるのかを確認するための実験を行い,研究全体のまとめを行う. これまで研究を進める中で,補助情報を与えるタイミングなどの与え方が大きく影響する可能性が示唆されている.図的情報の影響を検討する実験においても,図の内容の違いだけでなくタイミングの違いなどの影響も考慮し,実験を計画し,実施をしていく.また,生成AIによる自動的な要約が広く利用できるようになったことを鑑み,実験課題の準備には生成AIによる要約を積極的に活用していくことを計画している.これにより,今後の読解支援における生成AIの活用手段についても新たな提案ができることが期待される.
|
Causes of Carryover |
当初計画では2023年度に論文投稿料あるいは学会発表旅費に充当する予定であったが,論文投稿料が発生しなかった.2024年度における研究成果の発表において,改めて論文投稿料・学会発表の費用に充当することを予定している.
|