2021 Fiscal Year Research-status Report
プログラム作成・修正過程の分散表現開発と学習支援発話の生成
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20K12101
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
竹内 和広 大阪電気通信大学, 情報通信工学部, 教授 (20440951)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学習支援システム / ソフトウェア工学 / プログラム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に試作したプログラム作成過程データベースに基づき、学習者の不完全なプログラムを解析することにより学習者の理解状態を推定し、それに基づいてアドバイスを提示する学習支援システムの試作に着手した。具体的には、実際の学習者のプログラム解析に対応するため、学習者の教材として用いるプログラム対象を有識者の意見・資料に基づき絞り込み、プログラムを表現する一般的な構造であるAST(Abstract Syntax Tree)を拡張した拡張AST解析モジュールを試作システム上に組み込むことができた。 他方、当初計画では、システムの試作・運用を軸に斬新的に研究・開発していく計画であったが、新型コロナウィルス感染症蔓延防止の観点から、研究代表者の勤務大学ではプログラミング教育授業の実施方法が変更され、当初計画していた方法ではデータ収集やシステムの試作・運用をすることはできなくなった。そのような状況変化に対応して試作システム構築を進めるため、研究代表者の勤務大学内でのプログラミング教育の実践者および補助者からの意見収集に基づいてシステム試作ができる形にシステムの構築方法を変更して実施した。具体的には、適切な学習支援発話生成のための意見・情報収集の基盤を、質問・応答形式のデータにすることに変更し、システム内で学習者の理解過程の状態を分散表現を用いて管理していた部分について、その分散表現を自然言語に対応付けるモジュールを新規に開発し、システムを試用していない人間であってもシステムの内部状態や状態推定を、自然言語の質問・応答形式のデータを通して検討できるようにした。そのことにより、システム開発に必要なデータ作成・蓄積を行い、試作システムの構築を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度に引き続いて、新型コロナウィルス感染症蔓延を防止する観点から、研究代表者の勤務大学での授業運営および学術交流が極めて制限される形になってしまったことにより、研究実施の方法を当初計画から変更することを余儀なくされた。 そのような状況変化に対応して、学習者に対する試作システムの実践運用に基づいて斬新的に研究・開発していく計画を見直し、学内のプログラム教育実践者及び補助者と意見交換・連絡を密にしてシステム構築を進める形に変更した。具体的には、ソフトウェア工学の専門家でない研究協力者からも、試作途中のシステムにおける学習者の理解過程の状態推定やそれに対するアドバイスの意見収集・データ蓄積の協力が得られるように、開発中のシステムの内部表現を自然言語の質問・応答形式に変換したデータとして作成・確認ができるように、研究開発するシステムの構成要素を変更した。 以上のような計画変更により、試作システムの構築については堅調に開発が進められるようになり、データ作成・蓄積についても、適切な学習支援発話生成のための意見・情報収集の基盤が確立できた。しかし、このように当初計画を再考し、研究期間中期に予定していた試作システムの学習者に対する試験運用や、試作システムに対する学習者や有識者の意見収集については、試作システムの完成度を高めた後に実施する形へと計画変更をしたことに伴う遅れが生じている。また、研究成果の対外発表や外部の有識者との情報交換も限定された形に留まっているため、総合的な進捗としては当初の計画より「遅れている」と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度からの2年間、新型コロナウィルス感染症蔓延防止の観点から様々な制約が生まれ、当初計画からシステム開発や情報収集に関して実施方法の変更を余儀なくされ、適宜、方法を工夫して研究・開発を実施してきた。 そのような中で、当初計画よりも総合的には遅れた進捗ではあるものの、ソフトウェア工学の専門家ではない研究協力者にも関与してもらえる形でシステムの試作やデータ蓄積を進めることができるようになった。特に、開発中のシステムの内部モジュールを新規に開発して、開発の中途段階にあるシステムを試験運用以外の形でソフトウェア工学専門家以外でも検討ができるようにしたことは、当初計画にはなかったモジュール開発が必要になったものの、より頑健なシステム開発に繋がり、応用可能性も広がったものと考えている。 他方、試作システムの学習者に対する試験運用や、試作システムに関する学習者・有識者からの意見収集は、システムの完成度を高めた後に実施する形へと計画変更した。そのため、学習者の試作システムの利用に関わるデータ収集及び試作システムに対する意見収集・情報交換という面が不足しており、2022年度の実施を考えている。2022年度も、研究発表や実践機会をめぐる情勢が当初計画時とは異なるものとなっており、状況変化に対する予想は困難ではあるが、研究目的の達成と研究成果の社会還元が進むように適切に研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2021年度は、2020年度に引き続き、新型コロナウィルス感染症の蔓延防止の観点から、初年次に計画していた国内外の学会における情報収集・交換がオンラインの形に限定されてしまい、計画した旅費を使用することができなかった。 また、試作システムを実践的に用いたデータ収集や外部の専門家からの専門的知見の収集を行うことが困難であったため、当初計画になかったシステム内のモジュールを開発し、状況変化に対応した頑健な研究実施ができるようにした。しかし、その計画変更の検討・実施に関わる調整時間から、計画した人件費・謝金についても使用時期が遅れることとなった。 2022年度は、研究目的に即して、前年度に構築した試作システムの実践的な評価・データ蓄積に基づく改善・改良を実施し、国内外の学会のオンライン化に対応する形で研究開発で得られた知見を公表・情報交換し、適切に予算執行を実施していく計画である。
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