2022 Fiscal Year Research-status Report
東南極白瀬氷河域の顕著な底面融解を引き起こす背景要因
Project/Area Number |
20K12132
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
平野 大輔 国立極地研究所, 南極観測センター, 助教 (30790977)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東南極 / 白瀬氷河 / 氷床海洋相互作用 / 暖水流入 / 棚氷底面融解 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、南極氷床の質量損失が加速しており、全球海水準の上昇が懸念されている。氷床質量損失を加速させている主な要因は「周囲の海」による棚氷底面融解の促進であり、精度の高い海水準変動の将来予測には氷床質量損失に対する海洋の本質的な役割の理解が不可欠である。沖合暖水の流入による氷河の融解加速が相次いで報告されている西南極とは対照的に、東南極沿岸域は「冷たい海」として広く認識されてきた(Schmidtko et al., 2014)。 このような背景のもと、白瀬氷河域での顕著な融解プロセスをもたらす背景要因の解明を目指し、令和4年度においても砕氷船「しらせ」による現場観測データの取得に注力した。具体的には、白瀬氷河と同じリュツォ・ホルム湾(LH湾)内に位置するラングホブデ氷河の前面海洋において、統合的な海洋観測(水温・塩分・溶存酸素・圧力・流速・酸素同位体比サンプルなど)および詳細なマルチビームによる海底地形調査を初めて実施することに成功した。これは、同じLH湾内に存在する氷河間の共通性およびローカルな地域性の解明に資する貴重な観測データとなり、同じ湾内でもなぜ白瀬氷河の方がより顕著な海洋による融解が生じるのか?の理解に新たな解釈を与えるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点を勘案し、概ね順調に進展していると判断した。 ・ これまでにLH湾内外で蓄積された海洋観測データと海面力学高度データセットおよび数値モデル結果を統合し、白瀬氷河域の顕著な底面融解をもたらす外洋側の背景要因として、ウェッデルジャイヤや斜面域ジェットが重要であることを明らかにした。 ・ LH湾ラングホブデ氷河の前面海洋での集中的な海洋観測と海底地形調査が初めて実現した。これは、同じ湾の中における白瀬氷河とラングホブデ氷河への暖水流入過程の違いなど、ローカルな地域差も含め、当該海域における顕著な底面融解をもたらす背景要因のより詳細な理解に資するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
LH湾で蓄積してきた海洋観測データと海面力学高度データセット・数値モデル結果を融合し、湾内へ流入する沖合起源暖水の変動性を明らかにする。また、白瀬氷河とラングホブデ氷河への暖水流入過程の違いなど、ローカルな地域差も含めた白瀬氷河域での顕著な底面融解をもたらす背景要因の詳細な理解を目指す。 また、他の東南極氷河における観測知見との比較を通して、東南極における暖水流入を伴う氷床海洋相互作用の普遍性・地域性を見い出す。
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Causes of Carryover |
本研究計画策定時の想定よりも広域で現場観測データを取得することができている。東南極における氷床海洋相互作用の共通性・地域性も含めた体系的な理解を図るべく、これら新規データの統合的解析を実施するとともに、関連の論文化を目指し補助事業期間を延長した。繰越額は成果取りまとめに向けて論文出版費として支出予定である。
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[Presentation] On-Shelf Circulation of Warm Water Toward the Totten Ice Shelf, East Antarctica2022
Author(s)
Daisuke Hirano, Takeshi Tamura, Kazuya Kusahara, Masakazu Fujii, Kaihe Yamazaki, Yoshihiro Nakayama, Kazuya Ono, Takuya Itaki, Yuichi Aoyama, Daisuke Simizu, Kohei Mizobata, Kay I. Ohshima, Yoshifumi Nogi, Stephen R. Rintoul, Esmee van Wijk, Jamin S. Greenbaum, Donald D. Blankenship, Shigeru Aoki
Organizer
JpGU Meeting 2022
Int'l Joint Research
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