2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of atmospheric nitrogen deposition on ecosystem: the special role of moss
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20K12137
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
大石 善隆 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (80578138)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コケ植物 / 生物指標 / 窒素汚染 / 生態系 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速なアジアの発展に伴って近隣諸国から日本へ飛来する汚染物質が増加している。なかでも、窒素を含む化合物(窒素降下物)は植生を変化させ、生態系へ深刻な影響を与えるとされる。 大気から窒素降下物を効率よく吸収するコケ植物は窒素汚染の影響を受けやすく、その一方で、生態系の窒素循環を理解するためのカギの一つとされている。そこで、本研究では窒素汚染に対するコケの応答に着目し、以下の手順でコケを介して窒素汚染が生態系に及ぼす影響の解明を試みる。(1)まず、コケが窒素吸収・蓄積に担う機能や、その窒素負荷に対する応答を明らかにする。(2)これらの結果に基づき、窒素負荷の増大がコケの機能をどう変化させ、生態系の窒素循環にどのような影響を与えるのか考察する。本年度は(1)、(2)を進めるとともに、既存のデータを整理し、コケの窒素吸収特性とその生態系における役割について知見を深めた。 その結果、日本においては、コケに含まれる窒素含有量は雨水に含まれる窒素の総量よりも、その濃度と強い相関があることがわかった。この理由として、日本では季節ごとに降水量が大きく異なり、雨水に含まれる窒素濃度が著しく変化すること、および、窒素濃度の高い雨水からコケは効率よく窒素を吸収すること、が考えられた。 また、日本の山岳域の一部の地域では、コケに含まれる窒素含有量が高く、窒素汚染が進行しつつあることも明らかになった。地理的要因を考慮すると、この窒素汚染の原因の一つとして越境大気汚染が挙げられた。 生態系における窒素循環については、倒木上のコケが倒木に含まれる窒素量の増加させることで、腐朽の進行に影響している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
緊急事態宣言などの影響もあり、調査・分析が制限され、予定よりも研究が遅れている。そこで、今後の社会状況を考慮しつつ、研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
未調査の地域を中心に調査を進め、窒素汚染の実態解明を進めていく。また、当初の想定と異なり、コケに含まれる窒素含有量は雨水に含まれる窒素降下量ではなく、その濃度と強い相関があることが示唆された。そこで、この知見を踏まえ、コケの窒素添加実験について修正を加えること計画している。
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Causes of Carryover |
緊急事態宣言などの影響で調査・分析に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。今後、社会状況に応じて全体の調査計画を修正しつつ、順次、調査・分析を進めていく。
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Research Products
(1 results)