2020 Fiscal Year Research-status Report
河川におけるバクテリア生産の定量:河川水および河床の石のバイオフィルム
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20K12140
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
土屋 健司 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 特別研究員 (70739276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バクテリア生産速度 / 安定同位体 / 河川生態系 / プランクトン / バイオフィルム / 瀬淵構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
長野県を流れる千曲川において,上田市に位置する常田地区の瀬と淵,長野市に位置する岩野地区の瀬の3地点で河川水および河床のバイオフィルムのバクテリア生産速度を測定した.バクテリア生産速度は安定同位体で標識したデオキシアデノシンを用いて,バクテリアのDNA合成速度から見積もった.その結果,河川水バクテリア生産速度は5.5 ~ 466 mgC/m2/d,バイオフィルムバクテリア生産速度は2.9 ~ 132 mgC/m2/dの範囲で変動した.季節変動においては,河川水バクテリア生産速度は春に最大値を示し,バイオフィルムバクテリア生産速度は夏に最大値を示した.また,空間的な差異に着目してみると,河川水バクテリア生産速度は地点間で統計的な有意差は見られなかったが,常田地区の瀬におけるバイオフィルムバクテリア生産速度は,他の2地点と比較して有意に高い値を示した.以上にように,河川水およびバイオフィルムのバクテリア生産速度は,季節変動および空間変動において,それぞれ異なる挙動を示していたことが明らかとなった.これらの変動を規定する要因を探るため,一般化線形モデルを用いて環境変数が河川水およびバイオフィルムバクテリア生産速度に及ぼす影響を検討した.その結果,河川水バクテリア生産速度は水温と溶存態有機炭素,バイオフィルムバクテリア生産量は水温と地点,流速,バイオフィルムバクテリア現存量(負の効果)などによって説明されることが示唆され,両バクテリア生産速度は異なる環境要因によって制御されていたことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バクテリア生産速度の季節変動・空間変動を明らかにするための千曲川での調査は計画通り実施され,分析も順調に進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
千曲川における観測で得られたバクテリア生産速度の動態及び環境要因との関係性が,他の河川生態系においても一般性を有するのかどうかを確認するため,本手法を他河川に応用し,比較を行う.
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Causes of Carryover |
今般の社会情勢によって河川での現場調査や現地での学会発表が制限されたため,分析に使用する物品費や,旅費などの支出が抑えられた.次年度は当該年度で行えなかった調査での旅費や物品費や,現地での学会発表があればその旅費に使用する予定である.
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[Book] 水環境の事典2021
Author(s)
(公社)日本水環境学会
Total Pages
640
Publisher
朝倉書店
ISBN
978-4-254-18056-5