2022 Fiscal Year Annual Research Report
河川におけるバクテリア生産の定量:河川水および河床の石のバイオフィルム
Project/Area Number |
20K12140
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
土屋 健司 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 研究員 (70739276)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バクテリア / 河川 / バイオフィルム / プランクトン / 出水 / バクテリア生産 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
気候変動に伴う異常気象の頻度・規模の増加が予想されており,大規模出水のような突発的なイベントに対する河川生態系の応答・回復過程を明らかにすることは,将来的な影響予測や生態系に配慮した適応策の策定などに資すると考えられる.本研究では,令和元年東日本台風に伴う大規模出水がバクテリア群集に及ぼす影響を明らかにするため,2019年2月から2020年11月まで千曲川中流域において,プランクトン(河川水)および河床バイオフィルムを対象にバクテリア生産速度(BP)と群集構造の観測を行った.プランクトンおよびバイオフィルムのBPは,それぞれ春,夏に極大を持つ季節変動を示した.両者の水温に対する応答は出水前後の期間で顕著な変化は見られず,BPに及ぼす出水の長期的な影響は認められなかった.群集構造に関しては,プランクトンとバイオフィルムで応答が異なった.プランクトンのバクテリア群集構造は3つのクラスターに分類され,それぞれ4月,5月~10月,11月~3月と,出水前後の区別なく明確な季節変動が見られた.このことから,今回のような大型出水イベントであってもプランクトンのバクテリア群集構造に対する影響は軽微であったと推論できた.一方,バイオフィルムの群集構造は出水直後に大きく変化し,数ヶ月間同様の群集構造を維持した.その後,2020年5月以降に出水前に見られていた群集構造へと回復した.以上のように,バクテリアは世代時間が非常に短いにも関わらず,バイオフィルムのようなハビタットにおいては大規模出水によるリセットから群集構造の回復には数か月を要することが示唆された.
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