2021 Fiscal Year Research-status Report
人為起源エアロゾル由来の栄養塩供給が海洋生態系と物質循環に与える影響の評価
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20K12144
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 彬友 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), 特任研究員 (30794680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽島 知洋 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(環境変動予測研究センター), グループリーダー代理 (40533211)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貧酸素化 / 炭素循環 / 大気沈着 / 気候変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度実施した過去再現実験を用いて、溶存酸素と海洋炭素吸収に対する気候変動、窒素沈着、鉄沈着の影響を評価した。窒素沈着の増加に伴う海洋内部での有機物分解の増加は、気候変動に伴う溶解度低下と成層化と共に溶存酸素減少を減少させた。海洋上層1000mにおける溶存酸素減少に対する窒素沈着の影響は気候変動の影響の約70%であった。鉄沈着の影響は基礎生産への影響と同様に溶存酸素への影響はわずかであった。先行研究からモデルは観測された溶存酸素の低下を過小評価する傾向が報告されていたが、人為起源エアロゾル由来の栄養塩供給を考慮することで、モデルと観測のミスマッチの一部が改善することが明らかになった。また、海洋炭素吸収量はシミュレーションの最後の10年間において、窒素沈着の増加の影響で約7%増加し、気候変動に伴う減少をほぼ打ち消すことがわかった。
本年度得られた上記の結果と昨年度調査した基礎生産への影響をまとめ、河川からの栄養塩供給の影響についても調べた内容の論文を投稿し、改訂を実施した。
SSP1-2.6, SSP2-4.5, SSP5-8.5シナリオを用いた将来予測実験においても、温暖化、窒素沈着、鉄沈着の影響を切り分ける感度実験を実施した。SSP1-2.6, SSP2-4.5シナリオでは、過去再現実験と同様に基礎生産と溶存酸素の変化に対する人為起源栄養塩流入の影響は気候変動の影響と同程度であったが、SSP5-8.5シナリオでは気候変動の影響が支配的であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に計画していた過去再現実験を用いた影響評価と将来予測実験を予定通り実施した。
過去再現実験については、貧酸素化と海洋炭素吸収に対する温暖化、窒素沈着、鉄沈着の影響をそれぞれ解析し、窒素沈着の影響の重要性を明らかにした。また、観測やCMIPモデルとの比較を通じて、得られた結果の妥当性を確認した。その上で、計画より早く結果をまとめて論文を投稿することができた。
将来予測実験については、3つの温暖化シナリオにおいて温暖化、窒素沈着、鉄沈着の影響を切り分ける感度実験を実施し、シナリオごとに気候変動の影響と人為起源エアロゾル由来の栄養塩供給の影響との関係が違うことを明らかにし、来年度に論文を作成する目処を立てた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、今年度投稿した過去再現実験を解析した論文の改訂作業を実施し、受理を目指す。
将来予測実験については、基礎生産、溶存酸素と炭素吸収に対する、気候変動、窒素沈着、鉄沈着の影響を地域ごとに解析する。その上で、今年度実施した全球応答の解析と合わせて論文を作成する。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会がコロナウィルス感染対策で開催中止になったため、旅費を使用することができなかった。 これらの助成金は、来年度のワークステーションもしくはパソコン購入費と論文の英文校正費、投稿費として使用する予定である。
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