2022 Fiscal Year Annual Research Report
窒素沈着が土壌有機物分解を抑制する新たなメカニズムの解明
Project/Area Number |
20K12147
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
國頭 恭 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (90304659)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 土壌 / 窒素沈着 / 土壌酵素 / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
森林生態系への窒素流入により、リグニン分解酵素活性と微生物バイオマスが減少し、植物リターや土壌有機物の分解が抑制されることが報告されている。しかしながら、窒素流入により、リグニン分解酵素活性と微生物バイオマスが低下する機序については不明な点が多い。リグニン分解菌は増殖速度が遅くリン獲得能力が低いことが示唆されているため、本研究では、窒素流入にともなう相対的なリン利用性の低下により、競争力の劣るリグニン分解菌のリン制限が顕在化し、リグニン分解酵素活性が低下するという仮説をたて、それを検証した。 森林土壌3点と植物リターを採取し、植物リターを乾燥・粉砕した後、土壌に添加し、最大容水量の60%の水分量で培養した。この際、窒素を添加した区と、添加しない対照区を設けた。培養後、土壌pHと可給態リン濃度、リグニン分解に関わるポリフェノールオキシダーゼとペルオキシダーゼ、またセルロース分解に関わるβ-グルコシダーゼの活性を測定した。 土壌pHへの、窒素添加による顕著な影響は認められなかった。水抽出画分のリン濃度は、いずれの土壌でも窒素添加区の方が対照区よりも高値を示した。このため、窒素添加によりリン利用性が低下するという仮説とは一致しなかった。酵素活性では、黒ボク土において窒素添加によりポリフェノールオキシダーゼ活性とβ-グルコシダーゼが有意に低下したが、ペルオキシダーゼ活性は増加した。褐色森林土2点では、窒素添加によるリグニン分解酵素活性への有意な影響は認められなかった。興味深いことに黒ボク土では、ポリフェノールオキシダーゼ活性とペルオキシダーゼ活性は有意な負の相関を示し、また3土壌の結果を合わせた解析でも同様の関係が得られた。このため、リグニン分解に関わる両酵素の相補的な働きが推察された。
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Research Products
(1 results)