2020 Fiscal Year Research-status Report
大気鉛直観測を輸送モデルに同化した東アジアのエアロゾル排出量の改善
Project/Area Number |
20K12155
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
山下 陽介 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 特別研究員 (40637766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 誠 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00599095)
宮川 拓真 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(地球表層システム研究センター), 副主任研究員 (30707568)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 大気エアロゾル / 化学輸送モデル / 大気鉛直観測 / データ同化 |
Outline of Annual Research Achievements |
冬季~春季の日本周辺では、しばしばエアロゾル等の大気汚染物質が増加し、越境汚染の問題など社会的影響も大きい。しかし、東アジアのエアロゾル放出量には推定精度の低い場所の情報も含まれるため、日本付近へのエアロゾル到達量予測やエアロゾルの気候影響評価の精度を下げてしまう問題がある。本研究では、化学輸送モデルによる大気エアロゾル等の大気汚染物質のシミュレーションを行い、輸送モデルにエアロゾルやガス等の観測情報を同化することで東アジアの放出量を大幅に改善した予測モデルを開発することを目的としている。長崎県の福江島等、既に連続観測が行われている地点のデータ収集に加え、新たに秋田県で地上観測とドローンによる大気鉛直観測を行うことで、中国東北部付近など放出量の推定精度の低い場所から日本海側に輸送される汚染物質の放出量改善を試みる。本年度は化学輸送モデルによるシミュレーションの実施と、既存の連続観測データの収集、秋田県立大学における地上観測、及びドローン観測の実施を予定していた。まずは、越境汚染等を調べるために必要な水平解像度56 kmの化学輸送モデルNICAM-Chemを用いて、全球のエアロゾル輸送実験を進めた。また観測情報を同化するための準備として、データ同化システムのテスト計算を行い、福江島等、既に連続観測が行われている地点のデータ収集も進めた。秋田県立大学では二酸化炭素等の観測を行い、またドローンに搭載してエアロゾルを観測するための測器の準備を進めた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で首都圏から秋田まで移動することができなかったため、秋田における地上連続観測を行うための簡易測定器の初期設定は次年度に延期となった。これに伴い、秋田で予定していた冬季~春季の観測は1年延期することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放出量の推定精度の低い中国東北部付近の汚染物質は、冬季~春季の日本海側で東寄りの 風となるケースで秋田付近に到達しやすい。例えば、冬季~春のはじめ頃に多く見られる北海道の東側に発達した低気圧があり冬型の気圧配置となるようなケースや、春季に移動性高気圧が本州の南側に到達するケースが挙げられる。これらのケースを捉えるため、秋田県立大学における冬季~春季の地上連続観測や、ドローンによる大気鉛直観測を予定していた。観測のセットアップを行うには、地上連続観測を行うための簡易測定器の操作方法を熟知した分担者が首都圏から秋田まで移動する必要があるが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で移動制限が続いたため、簡易測定器の初期設定は次年度に延期となり、初年度の冬季~次年度の春季に予定していた観測は1年延期することになった。一方で、化学輸送モデルによる大気汚染物質のシミュレーションは予定通り進めることができ、次年度以降の観測をサポートできる状態となった。また観測情報を同化するためのシステムのテストと既に連続観測が行われている地点のデータ収集を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降には、既に観測をサポートできる状態となった化学輸送モデルによるシミュレーションを行う。データ同化システムでは、観測されたエアロゾル濃度をもっともよく再現するように放出量を最適化し、その際の汚染源付近の放出量を「真の値」として逆推定する。このため、放出源から離れた場所の観測を増やすほど精度向上が期待される。まずは、既に収集した福江島の連続観測データを同化して排出量の推定等を進める予定である。さらに、秋田における冬季~春季における地上連続観測や、ドローンによる大気鉛直観測で得られた観測情報を同化して推定精度の向上を図る。地上連続観測を行うための簡易測定器の初期設定が遅れているため、新型コロナウイルス感染拡大による移動制限の状況を見ながら初期設定を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、首都圏と秋田の間での出張が行えなかったため、出張は次年度以降に行うこととなった。また、秋田へ出張して行う予定であった観測機器のセットアップが延期となったため、関連する物品費の支出も次年度に繰越しとなった。
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