2022 Fiscal Year Research-status Report
乾燥を選択圧とした適応進化実験による放射線耐性細菌の放射線耐性能の進化機構の解明
Project/Area Number |
20K12160
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 毅 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10274143)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線耐性細菌 / 放射線耐性機構 / 生体防御機構 / γ線 / 電離放射線 / 大腸菌 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。昨年度までにγ線を選択圧とした適応進化実験により放射線耐性大腸菌が作出され、進化大腸菌の高い放射線耐性にはストレスに対する細胞回復、DNA修復、生存、レスポンスに関与する遺伝子(以下、抗ストレス遺伝子とする)の構成的な発現上昇が関与していることが明らかとなった。引き続き本年度においては、γ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の全ての遺伝子の発現量をRNA-Seq解析により定量し、発現変動遺伝子に対するGO解析を行うことにより以下の成果を得た。 1)野生型大腸菌と進化大腸菌ではγ線照射による遺伝子発現量の変動への影響が異なっており、進化大腸菌における抗ストレス遺伝子の誘導効率は野生型大腸菌と比較して高いことが明らかとなった。 2)抗ストレス遺伝子の発現量は、野生型大腸菌と比較して進化大腸菌で増加し、γ線照射により誘導されさらに増加することが明らかとなった。 3)これまで得られた結果より、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の構成的な発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。 また、電離放射線の生物影響の基礎的知見を得るため、DNA溶液、およびほ乳類培養細胞にγ線、中性子線、各種イオン線を照射し、その影響の解析も行った。その結果、放射線照射により生成するクラスターDNA損傷量にはLET依存性があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。 本年度はγ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の遺伝子発現状態をRNA-Seq法により解析した。その結果、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の構成的な発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。 しかし、RNA-Seq解析において得られた結果は、quantitative real time RT-PCR法により確認する必要がある。現在、このPCR解析が未実行であるため「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までにRNA-Seq解析により、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の構成的な発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。そこで今後、これらの結果をquantitative real time RT-PCR解析により確認する。
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Causes of Carryover |
理由:本年度は、昨年度までに行った適応進化実験によって得られた結果の解析研究を行った。その結果、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の構成的な発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。これらの解析研究はコンピューターを使用して行ったため、大きな経費がかからず次年度使用額が生じた。 使用計画:今後、上記結果を確認するためにquantitative real time RT-PCR解析を行う必要がある。そのため、次年度の研究費はPCR解析に必要な試薬、器具等の購入費として使用する予定である。
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