2023 Fiscal Year Research-status Report
乾燥を選択圧とした適応進化実験による放射線耐性細菌の放射線耐性能の進化機構の解明
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20K12160
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齊藤 毅 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (10274143)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 放射線耐性細菌 / 放射線耐性機構 / 生体防御機構 / γ線 / 電離放射線 / 大腸菌 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。これまでにγ線を選択圧とした適応進化実験により放射線耐性進化大腸菌を作出した。そして、γ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の全ての遺伝子の発現量をRNA-Seq解析により定量・比較し、発現変動遺伝子に対するGO解析、KEGGパスウェイ解析、階層クラスター分析を行うことにより以下の成果を得た。 1)野生型大腸菌と進化大腸菌では定常状態における遺伝子発現状態が異なっていた。さらに、野生型大腸菌と比較して進化大腸菌では、ストレス曝露後の生存、細胞回復、DNA修復、レスポンスに関与する遺伝子(抗ストレス遺伝子)の発現量が有意に増加していた。 2)野生型大腸菌と進化大腸菌ではガンマ線照射による遺伝子発現量の変動への影響が異なっていた。さらに、進化大腸菌におけるガンマ線照射による抗ストレス遺伝子の誘導効率は野生型大腸菌におけるそれと比較して高かった。 3)抗ストレス遺伝子の発現量は、野生型大腸菌と比較して進化大腸菌で増加し、ガンマ線照射による誘導によりさらに増加した。 4)これらの結果より、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態での発現量の増加、およびガンマ線照射によるそれらの高効率の誘導が進化大腸菌の高い放射線耐性に関与していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、適応進化実験により電離放射線に対し高い抵抗性を有する大腸菌を作出し、その性状を解析することにより、細菌および生物一般の放射線耐性機構およびその進化の機構を解明することである。 本年度までにγ線を選択圧とした適応進化実験により、γ線耐性進化大腸菌を作出した。さらに、γ線非照射野生型大腸菌、γ線照射野生型大腸菌、γ線非照射進化大腸菌、およびγ線照射進化大腸菌の遺伝子発現状態をRNA-Seq法により解析した。その結果、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態における発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。 しかし、RNA-Seq解析において得られた結果は、qRT-PCR法により確認する必要がある。現在、このqRT-PCR解析が未実行であるため「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までにRNA-Seq解析により、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態における発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。そこで今後、これらの結果をqRT-PCR解析により確認する。
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Causes of Carryover |
理由:昨年度までに、適応進化実験によって得られた放射線耐性進化大腸菌に対する耐性機構の解析を主にRNA-Seq法によって行った。その結果、進化大腸菌における高い放射線耐性には、野生型大腸菌と比較した時の進化大腸菌における多数の抗ストレス遺伝子の定常状態における発現量の増加、およびそれら抗ストレス遺伝子のγ線照射による高効率の誘導が関与していることが明らかとなった。本年度はこれらの結果をqRT-PCR法によって確認する計画であったが、新型コロナウイルスに感染し、その感染症および後遺症の影響で計画通り研究を遂行することが出来なかった。そのため、次年度使用額が生じた。 使用計画:今後、上述の通りqRT-PCR解析を行う計画である。そこで、次年度の研究費はqRT-PCR解析に必要な試薬、器具等の購入費として使用する予定である。
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